COLUMN/INTERVIEW

「ブルーノート80ガイドブック」刊行記念トーク・イベント 完全レポート ~第4回~

斉藤:それではつづいて、ドン・ウォズが社長になってからのブルーノート作品を聴いていきましょう。後藤さんからよろしいでしょうか?

後藤:私の推薦するアルバムはゴーゴー・ペンギンの『マン・メイド・オブジェクト』。最初に聴いたときは「あ、面白いな」と思ったけど、ちょっと「色物かな」という懸念も払拭できなかったんです。だけど面白いから聴いたと。それでこのアルバムが出た春だったか、「ブルーノート東京」で行われた初来日公演を見て大当たりだと思いました。普通のひとが最初に注目するのはクリス・アイリングワースのピアノだと思います。ジャズというよりもクラシックやエレクトロニカのひとで、非常にメロディアスでキャッチ―だけどあまりジャズ的ではない。だけどライヴを見て全然違うと思った。それはどういうことかというと、ベースのニック・ブラッカなんです。ライヴを見るとベースがリーダーシップをとっていることがよくわかる。それでロブ・ターナーのドラムがめちゃくちゃうまい。

原田:彼も含めて、ドラムは世界中で花ざかりという印象を受けます。

後藤:最近のジャズ・シーンがすごく変わったのは、なんといってもドラマーが昔のレベルとは違う。上手いのは当たり前で、テクニック的には昔のドラマーが追い付かないところにいて、なおかつオリジナリティと音楽性がとんでもないレベルに達している。ロブ・ターナーもそうですけど、彼のドラムとベースが生み出すグルーヴがとんでもないんです。そこにピアノが絡んでいく。サウンドこそエレクトロニカなんて言われていますが、完全にドジャズですよ、ライヴを観ないとわからないんだけど。最近のジャズ・シーンは面白いと言われていますが、過去のジャズのグルーヴ感が完全に伝統として残っている。そういう意味でゴーゴー・ペンギンは非常に面白いトリオだと思います。

斉藤:ゴーゴー・ペンギンのキャッチフレーズは「アコースティック・エレクトロニカ・トリオ」というんです。ピアノにエフェクターをかけて…。

後藤:だけど私に言わせるとこれは完全なジャズですよ。ドラムとベースのグルーヴ感がとんでもないですよ、ライヴではね。


♪ゴーゴー・ペンギン「イニシエイト」



後藤:キャッチ―で哀愁を帯びたメロディ。この辺はブルーノートの伝統というのかな、曲調にちょっと聴き耳を立てさせるという意味ではうまい作戦だと思います。ライヴを聴いているとすごくとんでもないんですけどね。言い方は悪いけど、うまいだまし方だと思いますね。

斉藤:ピアノはあまりソロをとらないで、ベースとドラムがひたすら演奏するんですよね。

後藤:寺島靖国さんが言っていたことを思い出しました。20年も30年も前に、「ピアノ・トリオはベースとドラムがサイドマンだ」と言われていた頃に、「いや、ピアノがサイドマンなんだ。ドラムを引き立てるためにピアノがいるんだ」と言っていた。そのときは何を言っているんだと思いましたが、先を見越していたんでしょうね。ゴーゴー・ペンギンにはいろんな魅力がありますが、ドラムとベースがすごいという。ビジネスも考えつつ、ちゃんとジャズの本質を捉えるという意味ではブルーノートのやりかたは正解だと思いますね。

斉藤:ジャズは基本的には即興演奏ですけど…。

後藤:やっぱりベースとドラムのグルーヴ感は即興だと思いますよ。バド・パウエルの頃はピアニストが即興するのが常識だったけど、現代はいろんな視野があっていいわけで。

斉藤:つづいて原田さん、お願いします。

原田:昨年出たトロンボーン・ショーティの『パーキング・ロット・シンフォニー』を持ってきました。ブラス、ストリングス、コーラスの重なり、そしてサウンド・エフェクト(効果音)の入り方をぜひ味わってください。


♪トロンボーン・ショーティ「ラヴォー・ダージ・フィナーレ」



原田:僕がトロンボーン・ショーティの名前を知ったのはもう10数年前、雑誌「ブルース&ソウル・レコーズ」を通じてでした。まだ少年というよりも子供という感じだった彼の記事が載っていた。それでアルバムを買って、一時期ミュージックバードでやっていた「ザ・ソウル・ソサエティ」という番組で、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドとジョン・メデスキの共演や、カーミット・ラフィンズの演奏と一緒に紹介した記憶があります。当時の彼はニューオリンズの土臭いブラスバンド少年という感じだったんですが、レッド・ホット・チリ・ペッパーズと同じ舞台に立ったり、ホワイトハウスで演奏したりして今では若き大御所です。それとともに音楽も洗練されてあか抜けて、ルックスもEXILEみたいになりました。以前ヴァーヴ・レーベルに吹き込んでいた頃にも思ったのですが、メジャーになるとこんなにシュッとするのか、という感じです。

(次回更新につづく)