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現代ジャズ・サックス界をリードするマーカス・ストリックランドが、ブルーノートへの歩みとアルバム『ピープル・オブ・ザ・サン』について語る。


現代ジャズ・サックス界をリードするひとり、マーカス・ストリックランドがこの7月に来日した。アコースティック・ジャズ系コンボによる日本公演は過去何度か行なわれてきたが、今回は彼自身のユニット“TWI-LIFE”によるステージ。エレクトリック楽器が生み出すリズムやハーモニーの分厚いうねり、肉感的なサックスの音色が聴き手を異次元へといざなった。「14歳の時にジョン・コルトレーンの『ブルー・トレイン』を聴いて以来、ブルーノート・レーベルに夢中なんだ」と語るマーカスにブルーノートと契約したきっかけ、そして自身のブルーノート盤について話をきいた。

ブルーノートからの第1弾は、2016年リリースの『Nihil Novi』。彼にとって約5年ぶりのリーダー作だった。

「自主レーベルのストリック・ミュージックで『Triumph of the Heavy, Vol. 1 & 2』を出してから、私は探求の時期を迎えていた。ビートメイキングとサックスの融合を深めたいという気持ちが強まるばかりだったんだ。最初にミシェル・ンデゲオチェロのバンドにいたドラマーのチャールズ・ヘインズに声をかけた。彼とはかつて、トランペット奏者ジェレミー・ペルトのもとで一緒に演奏したことがあるからね。他にBIGYUKIやミッチ・ヘンリーにもぜひ参加して欲しいと思った。2013年のことだったと思う、新編“TWI-LIFE”がニューヨークのウィンター・ジャズフェストで初ステージを踏んだ。それをミシェルが見てくれて、すごくいい印象を持ってくれた。私が“次のレコーディングをプロデュースしてくれませんか”と切り出したところ、彼女はただ“イエス”と答えた。実にクールだったよ(笑)」

この時点ではまだブルーノートとの契約は成立していない。そこに到達するには、もうひとりの才媛の力を必要とした。

「その頃、リヴァイヴ・ミュージック(ニューヨークのマネージメント・チーム)のミーガン・スタビーレがビートメイキング・コンテストを開催していた。ミゲル・アトウッド・ファーガソンがビートを採譜してオーケストラで演奏するという試みがあって、そのためにビートを応募したら優勝することができた。そこでミーガンに認められたんだ。リヴァイヴ・ミュージックは、ブルーノートと事業パートナーシップを結んでアルバムを出し始めたところだった。第1弾がオーティス・ブラウン3世(『The Thought of You』)、第2弾がコンピレーション(『Revive Music Presents Supreme Sonacy Vol. 1』)、第3弾が私の『Nihil Novi』だ」

ミシェル、ミーガン、ブルーノートとの出会いは、マーカスに一大飛躍をもたらした。

「それまで私が自主レーベルで取り組んでいたものとはまるで違っていた。マスタリングやミキシング等のスタジオ・プロセスをミシェルやエンジニアのボブ・パワーの横で学ぶことができたのも収穫だった。私の音楽のパレットはどんどん広がっている。ジャズというくくりで考えたくないし、ジャンルに関係なくいろんな音に取り組んでいくつもりだ。ブルーノート・レーベルという場所で、それが行なえるのは光栄だ。ブルーノートは、その時代のカッティング・エッジを捉えてきたところだからね」

2018年にリリースした『People of the Sun』は、日本でも「ミュージック・マガジン」をはじめとするメディアで賞賛された。

「音楽の傾向は『Nihil Novi』の延長線上にあるけれど、もっと“TWI-LIFE”独自のサウンドを聴いてほしいという気持ちから同時録音のパートをかなり増やした。『People of the Sun』というタイトルは、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンにも同名楽曲があるように決して珍しいものではないけれど、私はこういう気持ちを込めた。最近、やけに差別や憎しみが浮き出る事柄が多いような気がするんだ。人間は赤道に近ければ皮膚の色が濃くなるし、遠くなると薄くなる。だから肌の色は違っていても不思議ではないのに、世間では肌の色でその人は知性的であるとかそうではないとかジャッジしがちだ。私たちは皆、同じ地球で生きていて、同じ太陽の下にいる。それなのにどうしていつまでも争い続けるんだ? 太陽から力強い、良いエネルギーを得ているはずなのにね」

最後に、9月6日から全国順次公開される注目のドキュメンタリー映画『ブルーノート・レコード ジャズを超えて』にマーカスはブルーノート・オールスターズの一員として出演しているが、撮影時のエピソードを聞いてみた。

「偉大なヒーローであるハービー・ハンコックやウェイン・ショーターと共演できてうれしかったね。そこにいるだけで、彼らは僕をインスパイアしてくれるんだ」


テキスト:原田和典



■リリース情報
マーカス・ストリックランド
ピープル・オブ・ザ・サン

発売中
品番:679-2334(直輸入盤)

ブルックリン在住のサックス奏者/コンポーザー、マーカス・ストリックランドのバンド、Twi-lifeの2016年『Nihil Novi』以来2年ぶりのニュー・アルバム。

前作ではプロデューサーに Meshell Ndegeocelloを迎えたミクスチャー作品だったが、「ジャズかジャズでないかはもう考える必要はない。そういったバリアを払って、大体俺は誰なんだ?と考えるようになってからこういった音楽の道を進むようになった」とのこと。本作品は、自身でプロデュースを手掛け、曲も書き、演奏しすべてをこなしながらTwi-Lifeというバンドで力強く表現。 彼のアイデンティティを解く努力にも挑戦、「俺たちがどこから来たのか。そして、それがどうやってブラック・アメリカンとしてここで作り出していっていき、今アメリカで方を並べて存在しているのか」と語りかける。その結果、忙しながらも美しく、独創的で瞑想的なアルバム、西アフリカ(グリオ文化、アフロビート、パーカッション)とアメリカ(ポップ・バップ、ファンク・ソウル、ビート・ミュージック)の融合が実現!Bilal、Pharoahe Monchなど多くのヴォ-リストをフィーチャー。これぞジャズ・ザ・ニュー・チャプター!

01.Lullaby
02.Timing
03.People Of The Sun
04.On My Mind
05.Relentlessness
06.Marvelous
07.Black Love
08.Build
09.Cloaked In Controversy
10.Aim High
11.Spirit Of The Music

CDアルバムのご購入はこちら
https://store.universal-music.co.jp/product/6792334/


■映画情報
『ブルーノート・レコード ジャズを超えて』
マイルス・デイヴィスからノラ・ジョーンズまで、80年にわたりジャズをリードしつづける革新的レーベル「ブルーノート・レコード」。その真実に迫る傑作ドキュメンタリー。
https://www.universal-music.co.jp/cinema/bluenote/


Spotify


Apple Music
https://music.apple.com/jp/album/people-of-the-sun/1436663700