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【連載】ゆっくり、だけど、確実に。 〜福盛進也 音楽半生記〜 (第13回)


2019年に創立50周年を迎えたドイツの名門ECMレーベル。そのECMから昨年デビューを飾った日本人ドラマーの福盛進也。
15歳でドラムを始め、17歳の時に単身で渡米。その後、ブルックヘブン・カレッジ、テキサス大学アーリントン校を経て、バークリー音楽大学を卒業。10年間のアメリカでの活動後、2013年に拠点をミュンヘンに移し欧州各国で研鑽を積み、遂に念願のECMデビューを飾った福盛進也が、これまでの歩みを自ら綴る連載企画。


【第十三章】―ペガサス (中編)―

学校が始まりしばらく経ち、友達も増え充実した毎日を送っていた。そんな中、やはり刺激的だったのは演奏をする授業だった。僕は通称「バンド」と呼ばれる吹奏楽のアンサンブルに入っていた。ドラムだけでなく鍵盤打楽器やシンバル、大太鼓など様々なパーカッションを経験することで音楽的なアプローチをたくさん学んだ。バッハからコール・ポーターまで、あらゆる音楽を演奏し、非常に有意義な時間を過ごさせてもらった。また、その「バンド」から派生したパーカッション・アンサンブルでも演奏をしたり、また時には校外のコンテンストに出たりと、日本での普通の高校ではなかなか経験できない内容がとても楽しかった。

 
バンドのコンサート


また、「バンド」以外にももう一つアンサンブルがあった、その名も「ラテン・アンサンブル」。テキサスという土地柄もあり、マリアッチを始めラテン音楽はとても盛んだったのだ。「ラテンの王様」とも呼ばれたティト・プエンテの音楽を主に演奏し、僕はその核となるティンバレスを担当させてもらえることになった。テキサスに来るまでティンバレスのティの字も聞いたことがなかった日本人が急にラテン音楽を演奏することになったのだ。そしていくつか基本的なパターンを習得し、校内外でコンサートをしたり、そのコンサートの中でティンバレス・ソロなんかもあったり、本当に刺激的な毎日だった。


ラテン・アンサンブルのコンサート

そして何よりも驚いたのが、僕と同い年ぐらいの学生達がプロ顔負けのジャズを演奏していたのだ。定期的にグリーンルームと呼ばれる中庭で上級者が演奏したり、学校のホールでコンサートがあったり、自分もいつかこういう風に演奏することができたらな、といつしかジャズにどんどんと憧れていったのであった。その影響から、昼休みや放課後を利用しベーシストやピアニストの友達と集まってジャム・セッションをやってみたり、自分もどんどんと即興で演奏する楽しさを覚えていった。演奏以外にもオススメのCDを教えてもらったり、少しずつジャズの魅力を発見していくことができた。その時に勧めてもらったのがハービー・ハンコックの『ヘッド・ハンターズ』やソウライヴの『ターン・イット・アウト』だったりしたため、僕は次第にファンクのようなグルーヴのあるジャズが好きになっていった。また、同時期に同校を卒業したノラ・ジョーンズやロイ・ハーグローヴのことも知り、彼らの音楽も聴いていた。特にノラはまだ無名だったのだが、ダラスの皆は誰しも「彼女はこれからすごくなる」と口にしており、そしてその予想通り2003年にデビュー・アルバム『ノラ・ジョーンズ (原題:Come Away With Me)』で見事グラミー賞を受賞したのだった。

そうやって、才能のある芸術家の卵たちがたくさん周りにいる環境で過ごし、僕は常に刺激を受けていた。作曲家志望の天才たちが曲をどんどんその場で作り上げていく作業を側で見せてもらったり、ギタリストと早弾きの対決をしたり、ジャズ・ドラマーの同級生とスティックの握り方を語ったり。そして彼らは皆、卒業後に各地の有名音楽大学への進学を志していた。同級生の兄はArtsを卒業し、ジュリアード音楽院のジャズ科に在籍しているヴァイオリニストだった。彼とも仲良くなり、ジャズを色々と聴かせてくれた。その中に、僕の誕生日プレゼントとして贈ってくれたアルバムがあった。マイケル・ブレッカーの『ニアネス・オブ・ユー』だ。当時はブレッカーのことも知らなかったし、そのアルバムに参加しているパット・メセニーやチャーリー・ヘイデンの名前も当然知らなかった(ハービーはヘッド・ハンターズで知っていたが、演奏スタイルが全然違うため、同一人物だと気づかなかった)。そして一番衝撃的だったのは、3曲目「ナセント」でのジャック・ディジョネットのシンバル・ワーク。こんなに繊細で細かいシンバル・ワークなんて可能なのだろうか!?と、いつも聴きながらうっとりしていた。余談だが、この曲のサックスソロはブレッカー史上最高のものだと今でも思っている。


マイケル・ブレッカー
『ニアネス・オブ・ユー:ザ・バラード・ブック』

そんなジャックに今僕は少しでも近づけただろうか。いつも友達やホスト・ファミリーとの待ち合わせ場所になっていた、Artsの校門前にあったペガサスの銅像を思い出しながら、自分自身の胸に問いかけてみた。

※記事中のコンサート写真は本人提供

(次回更新は8月26日の予定です)


第十二章はこちら
https://bluenote-club.com/diary/228518?wid=68497

第十一章はこちら
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第一章~第十章のまとめ読みはこちら
https://bluenote-club.com/diary/221976


■最新情報
伊藤ゴロー、佐藤浩一との新ユニット
「land & quiet」のデビュー・アルバムがリリース。
『land & quiet』

2019.7.24 ON SALE  UCCJ-2169
https://youtu.be/9cNGNGuyO-8

land & quiet リリースツアー 2019

2019年 8月12日(月・祝) 岡山・宗忠神社
8月14日(水) 兵庫・rizm
8月15日(木) 東京・sonorium
https://www.facebook.com/landandquiet/

■Discography
Shinya Fukumori Trio
『フォー・トゥー・アキズ』
NOW ON SALE  UCCE-1171
https://youtu.be/eWc5dSMnMcc

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