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【連載】ゆっくり、だけど、確実に。 〜福盛進也 音楽半生記〜 (第14回)


2019年に創立50周年を迎えたドイツの名門ECMレーベル。そのECMから昨年デビューを飾った日本人ドラマーの福盛進也。
15歳でドラムを始め、17歳の時に単身で渡米。その後、ブルックヘブン・カレッジ、テキサス大学アーリントン校を経て、バークリー音楽大学を卒業。10年間のアメリカでの活動後、2013年に拠点をミュンヘンに移し欧州各国で研鑽を積み、遂に念願のECMデビューを飾った福盛進也が、これまでの歩みを自ら綴る連載企画。


【第十四章】―ペガサス (後編)―

ある日の朝、起きてリビングに行くと、ホスト・ファミリーが大騒ぎでニュースを観ていた。何やら飛行機が建物に突っ込んだみたいだ。状況がまだあまり把握できていないのか、ニュースキャスターも慌てていた。その後立て続けに合計4機の飛行機が爆発した。

2001年9月11日。
アメリカ同時多発テロの日の朝のことだった。

誰も何が起こったのか分からないまま、学校に向かう時間となった。その偶然と言うにはおかしすぎるこの事件の行く先が気になり、車でラジオ・ニュースを聴きながら学校に到着した。学校でももちろんみんな大騒ぎ。徐々に事態が明らかになるにつれ、周りは絶望感に苛まれていった。これはやはり偶然の事故なんかではなく、大規模なアメリカに対するテロだったのだ。国の緊急事態により学校も閉鎖され、早退を余儀なくされた。生徒たちも涙を流しながら「これがどういうことか分かるか? また戦争が始まるんだ!」と恐怖しかない世界と化していた。僕はと言えば、もちろんこの国がこれからどうなるかとても心配だったし、そもそもこの留学生活を続けられるのかも危うく感じられ、その後のニュースを追っていた。次の日からは学校も通常通り開校されたが、やはりしばらくの間は暗い空気に纏われていたように思う。今まで何ともなかった平穏な毎日を一瞬にして変える、そんな恐怖と絶望を与えたこのテロはその後世界的な大事件となり、そして今後の僕のアメリカ生活にも影響を及ぼした。単純に飛行機での移動も大変になったし、もちろん移民としてビザを取得することにも影響があった。差別的なこともたくさんあった。でも、そんなことで自分の道を諦めるのは馬鹿らしいので、僕は幾度となく戦いながら生活を続けた。

その後はそんなに暗い話ばかりではなかった。音楽漬けの毎日の中、私生活でも色々と変化があり、楽しい生活を送っていた。一番大きかったのが同じくArtsに通う彼女ができたことだった。彼女はダンス科に所属しており音楽科とはそんなに接点は無かったのだが、僕のホスト・ファミリーとも顔馴染みでよく顔を合わす機会があった。そんな彼女をアメリカの高校生活最大のイベント「プロム」に誘い一緒にダンスをしたこともとても良い想い出として残っている。休み時間に彼女と長文の手紙のやり取りをしたり、寝る前に電話で話したりしたのも、英語の上達に繋がったのかもしれない。授業中に手紙を書いているところを見つかり先生に注意されたりもしたが、それもまた一つの思い出だ。


ガールフレンドと

それ以外にも、友達とよく遊びに出かけたり一緒にジャズクラブに行ったり、また、楽器が揃っている友達の家でジャム・セッションをやったり、本当にかけがえのない時間を過ごしていた。たまに夜中に友達の家に集まり、親が旅行で留守なことをいいことにパーティーを開催し、内緒でアルコールを飲んだりタバコを吸ったり、その時にしか味わえない青春も経験できた。みんな二日酔いで目を覚まし、車でダイナーへと向かい眩しい日差しの中朝食を食べる。映画でよく見るような光景がそこにあり、その怠惰なゆったりと流れる空気が気持ちよかった。

そうやって音楽と青春をたっぷり味わいながら留学生活も無事に終わり、僕は1年ぶりに日本へと帰った。英語の上達のため、1年間日本とのやり取りはほぼなかったので、それだけ頑張った自分を誇らしく思い帰国した。きっと僕の両親も同じぐらい誇らしげに思ってくれたのだろうと思う。しばらくして、日本の高校の卒業式があったのだが、僕が帰国したのは皆が既に卒業した後の夏だったため、僕一人だけの卒業式になってしまった。それでも悪友のYは髪の毛を金髪に染め、スーツをビシッと決めてわざわざ参加し、僕の帰りを祝ってくれた。


一人だけの卒業式

そして僕はまたすぐに飛行機に乗りテキサスへと戻った。これからが本当の挑戦だ。

※記事中の写真は本人提供

(次回更新は9月9日の予定です)


第十三章はこちら
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第十二章はこちら
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第十一章はこちら
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第一章~第十章のまとめ読みはこちら
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■最新情報
伊藤ゴロー、佐藤浩一との新ユニット
「land & quiet」のデビュー・アルバムがリリース。
『land & quiet』

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https://youtu.be/9cNGNGuyO-8

■Discography
Shinya Fukumori Trio
『フォー・トゥー・アキズ』
NOW ON SALE  UCCE-1171
https://youtu.be/eWc5dSMnMcc

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