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コラム:ジャズ・ピアニストとしても本格派。俳優・ジェフ・ゴールドブラムのハッピーな新作。

文:原田和典



寡聞にして筆者は昨年のファースト・アルバム『ザ・キャピトル・スタジオ・セッションズ』が出るまでジェフ・ゴールドブラムがジャズ・ピアノを弾くということを知らなかった。ヒット映画『ジュラシック・パーク』シリーズ、『インデペンス・デイ』シリーズ等に出ている名優というイメージがすべてだったからだ。聴いてびっくり、これはとても役者がちょっとジャズに取り組んでみました的なものではない。ずっとジャズを愛し、聴き込んで、ピアノになじんできた者だからこそ出せる凛とした世界がそこにあった。きけば親の影響で子供の頃からジャズに親しみ、15歳の時にはホテル・ラウンジで演奏していたというではないか。バンド、“ザ・ミルドレッド・スニッツァー・オーケストラ”は結成から約20年になるそうだ。

そして、このたび第2作『アイ・シュドゥント・ビー・テリング・ユー・ディス』が登場した。表紙絵はフランク・シナトラのプール付きの邸宅で撮影されたという。個人的には強いAOR感、セレブ感もこのジャケットに感じるのだが、内容は1作目に増してファンキーだ。“60年代から70年代にかけての、ブルーノート・レーベルやプレスティッジ・レーベルのソウルフルなジャズが大好きなんだろうな”と、ニンマリさせられるような音といえばいいか。オルガンとの絡みもいい。加えて、アレンジにトンチが利いている。複数の曲を、一つのトラックに合わせてしまうのだ。生(なま)マッシュアップと呼びたくなる。リー・モーガン作「ザ・サイドワインダー」とソニー&シェールのヒット曲「ザ・ビート・ゴーズ・オン」がここまで見事に一体化したのにも驚かされるが、ジェフは“まだ足りない”とばかりに自身のアドリブ・パートの後半にボビー・ジェントリーの全米No. 1ナンバー「ビリー・ジョーの唄」のワン・フレーズを引用。ハービー・ハンコックがファースト・アルバム『テイキン・オフ』の中で演奏したきり、一度も再吹込みしていない「ドリフティン」のような知られざるナンバーを持ち出して、楽しく躍動的に聴かせてしまうセンスもさすがだ。ゲスト・シンガーにはジャズ・ヴォーカル界の雄であるグレゴリー・ポーターをはじめ、フィオナ・アップル、マイリー・サイラスらが参加。こんなにジャジーなフィオナやマイリーに今後、何回出会えるだろう。

俳優であり本格的なジャズ・ピアニストでもある先達といえば、筆者はダドリー・ムーア(映画『テン』、『ミスター・アーサー』シリーズ等に出演。アトランティック・レーベルにピアノ・トリオ作品あり)を思い出すが、彼が亡くなってもう20年近い。ジェフのハッピーでファンキーなジャズが、音楽や映画好きの間にさらに広がることを切望する。


Jeff Goldblum & The Mildred Snitzer Orchestra - The Cat (Music Video)




■リリース情報
ジェフ・ゴールドブラム
『アイ・シュドゥント・ビー・テリング・ユー・ディス』

2019. 11. 15 ON SALE
SHM-CD: UCCM-1257  \2,860 (tax in)
購入・試聴はこちら https://jazz.lnk.to/ISBTYTNL

収録曲
1. レッツ・フェイス・ザ・ミュージック・アンド・ダンス
2. ザ・サイドワインダー/ザ・ビート・ゴーズ・オン
3. ドリフティン
4. ザ・スリル・イズ・ゴーン/ジャンゴ
5. ザ・キッカー
6. ドント・ウォーリー・バウト・ミー
7. ザ・キャット
8. フォー・オン・シックス/ブロークン・イングリッシュ
9. イフ・アイ・ニュー・ゼン
10. メイク・サムワン・ハッピー
11. リトル・マン・ユーヴ・ハッド・ア・ビジー・デイ


■Link
ユニバーサルミュージック ジェフ・ゴールドブラム サイト
https://www.universal-music.co.jp/jeff-goldblum/