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コラム:悠々と進化を遂げるノラ・ジョーンズ 新たな一面をのぞかせた彼女の自由気ままな課外活動の記録



文:佐藤英輔

ノラ・ジョーンズは何をやろうと〜ポップな方に出張ったりカントリーな私を出していても〜、どこかでジャズの精神とつながっている。ぼくがそう思わせられるのは、彼女が思い立ったが吉日的に様々な人と自在にコラボレーションしているからだ。それこそは、他者と自在にセッションしたりするのが当たり前のジャズの流儀に他ならない。実は、かような傍系活動の量はマジ半端ない。少なくても、彼女ぐらい売れているシンガーで、こんなにやりたい放題にいろんなプロジェクトに手を染めている人をぼくは他に知らない。

『ノラ・ジョーンズの自由時間』(2010年)や『カヴァーズ〜私のお気に入り』(2012年)は、そんな彼女の多彩なお愉しみ活動の様をまとめた編集作だ。前者はUKロック・バンドのベル&セバスチャンやラッパーのタリブ・クエリの曲など彼女の録音参加曲を中心に集めたものであり、後者はその名の通りトム・ウェイツやファッツ・ドミノらのカヴァー曲を収めている。また、彼女の2019年作『ビギン・アゲイン』でもウィルコのジェフ・トゥイーディや辣腕制作者として名をなすトーマス・バートレットといった通受け才人たちとの“差し”の協調曲を柱に置く内容だ。

さらに、ノラが知己たちとともにバンドを複数組んできているのも、ファンならご存知だろう。『ザ・リトル・ウィリーズ』(2006年)と『フォー・ザ・グッドタイムス』(2012年)という2枚のアルバムを発表しているリチャード・ジュリアンらとのカントリー調のバンドのザ・リトル・ウィリーズや彼女のサポート・バンド派生の忍者コスプレ3人組のエル・マッドモー(2008年に『Madmo』をインディからリリース。うち1曲は『ノラ・ジョーンズの自由時間』にも収録)、そして『ノー・フールズ、ノー・ファン』(2014年)を出しているガールズ・グループのプスンブーツ……。それらはどれも、枠を超えて音楽するノラの歓びが顕れたプロジェクトであり、ちゃんとライヴ・ハウスでギグすることから始めている(←これも、ジャズ的な所作だ)。
 




蛇足だが、音楽配信という簡便な音楽伝達手段が確立した今、ノラの課外活動はより活発になっている。先に触れた『ビギン・アゲイン』は先行配信曲が複数入ったアルバムであるし、現在ヴァーヴ・フォアキャストと契約するタンク・アンド・ザ・バンガス(その新作『Green Balloon』にはロバート・グラスパーがゲスト入り)のタリオナ“タンク”ボールをフィーチャーした「Take It Away」、大御所R&B歌手のメイヴィス・ステイプルズと共演した「I’ll Be Gone」、在LAのブラジル人シンガー・ソングライターであるホドリゴ・アマランチと協調した「I Forgot / Falling」、プスンブーツ名義によるドリー・パートン曲のカヴァー「The Grass Is Blue」などは、今年配信されたノラ曲の曲だ。

さて、そんな彼女の新プロダクツは、女性3人組のプスンブーツによるアルバムだ。ノラに加え、2010年の来日公演に同行もしているサーシャ・ダブソン(父スミスはピアニストで、彼がボビー・ハッチャーソンを迎えた88年リーダー作の表題は『Sasha Bossa』。母親のゲイルも黒っぽい歌い方をするジャズ歌手で、サーシャも当初はジャズ・シンガーとしてデビューした)とライアン・アダムスやジャック・ホワイトといったロック界の人気実力者のバンドでベースを弾いてきたキャサリン・ポッパーが、その構成員である。

前作『ノー・フールズ、ノー・ファン』はカントリー・ビヨンドの和気あいあいの手作り表現作だったが、その基本路線は変わっていない。だが、今回の5曲入りの『ディア・サンタ』はその表題やジャケットのアート・ワークが示唆するようにクリスマス・アルバムであり、それは肝要。だって、ここには“ホリデイ・シーズン”の歓びと繋がる、くつろぎや眩さにあふれているから


『No Fools, No Fun』アルバム・トレーラー映像




『ディア・サンタ』に参加しているのは、ノラたち3人だけ。皆がヴォーカルを取り、ノラがギター、サーシャがドラム、キャサリンがベースを演奏する。なかにはノラとサーシャが楽器を持ち代える曲もあるが、どちらにしろ3者の関係の良さが透けて見える、見事な“女子会”バンド表現を確認できる。そして、そこには男社会であり続ける音楽界で鋭意活動を続けている女性ならではのしなやかさや覇気も横たわる。

3人の共作曲から、サーシャとブルーノート社長のドン・ウォズが共作した曲やキャサリン曲やノラの親友であるサラ・オダの曲まで、曲の作者はいろいろ。もちろん歌詞はクリスマスをテーマにしているが、ウィットの利かせ方はさすが。曲調も渋いロック調のものまであって、その総体は今を闊達に生きる女性の誉れや、米国で育まれてきた土臭いポップ・ミュージックが抱える襞の素敵を雄弁に伝えるものになっている。

そして、アルバムの最後に置かれた曲はスタンダードたる「サイレント・ナイト」。お馴染のメロディを3人が歌い、清新な弧を描いていく様は、まさに技ありと言うしかない。この曲には観客のいい感じの歓声が入っているが、昨年の12月に持たれたブルックリンのザ・ベル・ハウスでのライヴがソースとなっている。もう1つもライヴ曲で、他はシカゴやNYでスタジオ録音された。

蛇足だが、キリスト教圏でクリマス・アルバムを出す栄誉を得るのは、エスタブリッシュされたアーティストであることの証と言える。そんな意味からも、彼女がクリスマス・アルバムを発表するのはあまりに当然のこと。そして、ノラはその機会を見事に自らの表現発展の機会に繋げている。あっぱれ、ノラは悠々と新たな扉をまた開いている。おいしい、クリスマス情緒とともに……。


■リリース情報
プスンブーツ『ディア・サンタ』

好評発売中
SHM-CD(国内盤) UCCQ-1116  ¥2,200(tax in)
https://store.universal-music.co.jp/product/uccq1116/
他リンクまとめ  https://jazz.lnk.to/Oq7uR


プスンブーツ『ノー・フールズ、ノー・ファン』

好評発売中
SHM-CD(国内盤) UCCQ-9037 ¥1,980 (tax in)
https://store.universal-music.co.jp/product/uccq9037/
他リンクまとめ  https://jazz.lnk.to/NFNF


ノラ・ジョーンズ 『ビギン・アゲイン』

好評発売中
SHM-CD(国内盤) UCCQ-1097 ¥2,310 (tax in)
https://store.universal-music.co.jp/product/uccq1097
アナログ盤(輸入盤) 774-4040
https://store.universal-music.co.jp/product/7744040/
他リンクまとめ https://lnk.to/Norah_BeginAgain


■配信リリース
プスンブーツ「グラス・イズ・ブルー」配信中
https://music.amazon.co.jp/albums/B07XW7NL2L
ノラ・ジョーンズ + メイヴィス・ステイプルズ「アイル・ビー・ゴーン」配信中
https://norahjones.lnk.to/IBGPR
ノラ・ジョーンズ「テイク・イット・アウェイ feat.タリオナ“タンク”ボール」配信中
https://www.universal-music.co.jp/norah-jones/products/00602508096778/
ノラ・ジョーンズ「I Forgot / Falling feat.ホドリゴ・アマランチ」配信中
https://norahjones.jp/disco/i-forgot-falling/


■リンク
ノラ・ジョーンズ ユニバーサル ミュージックサイト https://norahjones.jp/
ノラ・ジョーンズサイト http://www.norahjones.com/
ノラ・ジョーンズInstagram https://www.instagram.com/norahjones/
ノラ・ジョーンズFacebook https://www.facebook.com/norahjones
ノラ・ジョーンズTwitter https://twitter.com/NorahJones
ノラ・ジョーンズ YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/user/NorahJones/
プスンブーツ ユニバーサルミュージックサイト http://www.pussnbootsmusic.com/
プスンブーツサイト http://www.pussnbootsmusic.com/
プスンブーツTwitter https://twitter.com/pussnbootsmusic
プスンブーツFacebook https://www.facebook.com/pussnbootsband/