COLUMN/INTERVIEW

ゆっくり、だけど、確実に。 〜福盛進也 音楽半生記〜 (第35回)


2019年に創立50周年を迎えたドイツの名門ECMレーベル。そのECMから昨年デビューを飾った日本人ドラマーの福盛進也。
15歳でドラムを始め、17歳の時に単身で渡米。その後、ブルックヘブン・カレッジ、テキサス大学アーリントン校を経て、バークリー音楽大学を卒業。10年間のアメリカでの活動後、2013年に拠点をミュンヘンに移し欧州各国で研鑽を積み、遂に念願のECMデビューを飾った福盛進也が、これまでの歩みを自ら綴る連載企画。


【第三十五章】―改革―

8月も終わりに差し掛かり、夏も終わりに近づいてきた…ということはなく、テキサスの地はまだまだ暑かった。ただ、日本に比べて湿度はかなり低く、40度近くなる日々がありながらも、比較的過ごしやすい印象だ。

そんな8月の最終月曜日、珍しく雨が降っていた。アメリカ生活7年目の始まりだ。このセメスターは9クラス、計18単位を取得する。オーディションの結果、UTA(University of Texas at Arlington)でのトップの座も守り抜いたし、また忙しい毎日になりそうだ。また、Timの力が大きく影響してきたのか、ジャズ科にも良い変化が起こってきた。まずはJO (Jazz Orchestra)。昨年度まで月、水、金曜日の週3日のリハーサル・スケジュールだったのが、今年度から月から金曜日まで毎日となった。流石はUNT (University of North Texas)のOne O’clock Lab Band出身のTim、ビッグバンドへの力の入れようが半端ない。そしてトランペット、トロンボーン、サックス、リズムの4セクションに分け、それぞれのセクション・リーダーも任命された。そのリーダーの下、セクション毎にリハーサルをするように命じられたのだ。一つ一つのセクションがまとまり、大きなグルーブ感を出すことにより、全体の演奏が更に良くなるだろうという考えだ。そんな中、なんと僕はリズム・セクションのリーダーに任命されてしまったのだ。リズム・セクションをまとめ上げ、リハーサルをスケジュールしたり進行したり、結構な責任を背負わなければならない。ただ、今年からは相棒のベーシスト、Youngも入学した。頼れる存在だし、リズム・セクションは確実に良くなるだろう。


JOのコンサート

また、JOだけでなく、コンボの方でも今までとは違う取り組みがあった。これまでは、Timがトップのコンボを指導していたが、このセメスターからは、准教授のDan Cavanaghが指揮を取ることになった。Danは当時27歳で、新進気鋭のピアニストで、作曲にも力を入れていた。Timがオーソドックスなスタイルのジャズを得意とするのに対し、Danはもっとコンテンポラリーなものをいつも取り入れていた。スタイルとしてはブラッド・メルドーに近いところがあった。そんなDanが指揮を取りつつ自らピアノを弾くという、僕たち生徒にとって、とても嬉しい変化となった。

ジャズ科の勢いは、それだけでは終わらなかった。これは、改革とは違い、偶然が重なっただけなのだが、New Orleansから素晴らしいドラマーがArlingtonにやってきたのだ。ニコラス・ペイトンのバンドなどで活躍する、アドニス・ローズだ。彼は、New Orleansに住んでいたのだが、2005年にアメリカ南部を襲った巨大ハリケーン「カトリーナ」の被害を受け、なんとか逃げてきたのだった。とにかくハリケーンから離れようと、必死に車で逃げ続け、最初に見つけた比較的大きな街がArlingtonだった、というわけだ。その後、Adonisは事あるごとにUTAに顔を出し、元々ジャズ・ドラム専門の講師がいなかったことも功を奏し、非常勤で指導をすることになった。ただ、指導の仕方はめちゃくちゃで、全く持ってプランやカリキュラムが無く、その場で思いついたことを実践していた。僕自身は、その行き当たりばったり感が肌に合っていたので、気に入っていたのだが、他の生徒からは不満が続出し、最終的には生徒と教師陣で会議を開くほどにまでなったのだ。その結果、講師を選べるようになり、ジャズを本格的にやりたい僕と、その他数人だけがアドニスに付いていき、他の皆は離れていってしまった。


アドニス・ローズ

こうやって、UTAがジャズに力を入れていき、その上、色々な任務を任された僕は、俄然やる気がみなぎってきた。新しいことにどんどん挑戦していこう、そう決めた7年目の始まりだった。

また、時を同じくして、それまで毎週続けていたDunn Brothersでの演奏を辞めることにした。向上心を持ち続けている自分と、同じ場所に留まり続けている他のメンバーとの間に、少し溝ができてしまい、やっていても楽しくなくなってしまったからだ。音楽を続ける苦しさや悩みを、この時から少しずつ理解し始めたように思える。


※記事中の写真は本人提供


(次回更新は7月6日の予定です)



第三十四章はこちら
https://bluenote-club.com/diary/327114?wid=67719
第三十三章はこちら
https://bluenote-club.com/diary/327114?wid=67719
第三十二章はこちら
https://bluenote-club.com/diary/326686?wid=67719
第三十一章はこちら
https://bluenote-club.com/diary/326228?wid=67719
第三十章はこちら
https://bluenote-club.com/diary/325601?wid=67719
第二十九章はこちら
https://bluenote-club.com/diary/324900?wid=67719
第二十八章はこちら
https://bluenote-club.com/diary/324140?wid=67719
第二十七章はこちら
https://bluenote-club.com/diary/323316?list_page=2&wid=67719
第二十六章はこちら
https://bluenote-club.com/diary/322416?list_page=2&wid=67719
第二十一章~第二十五章のまとめ読みはこちら
https://bluenote-club.com/diary/323331
第一章~第二十章のまとめ読みはこちら
https://bluenote-club.com/diary/267819


■最新情報
伊藤ゴロー、佐藤浩一との新ユニット
「land & quiet」のデビュー・アルバムがリリース。
『land & quiet』

2019.7.24 ON SALE  UCCJ-2169
https://youtu.be/9cNGNGuyO-8

■Discography
Shinya Fukumori Trio
『フォー・トゥー・アキズ』
NOW ON SALE  UCCE-1171
https://youtu.be/eWc5dSMnMcc

CDアルバムのご購入はこちら
https://store.universal-music.co.jp/product/ucce1171/

iTunes Store
https://itunes.apple.com/jp/album/for-2-akis/1440858594

福盛進也Official Site
https://www.shinyafukumori.com/

Universal Music福盛進也アーティスト・ページ
https://www.universal-music.co.jp/shinya-fukumori-trio/

公式Twitter
https://twitter.com/shinyafukumori

公式Facebook
https://www.facebook.com/shinyafukumoripage/