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【インタビュー】スタイルの差なんて恐れず、ジャズと呼ばれるものを演奏する 最先端ベーシスト、デリック・ホッジが新アルバムに込めた思いとは―

デリック・ホッジのニュー・アルバム『Color of Noize』は、ドン・ウォズが共同プロデュースを担当し、R+R=NOWでも共演しているジャスティン・タイソンや、マイケル・アーバーグ、DJ・ジャヒ・サンダンスといった信頼を寄せるメンバーに、新鋭のマイク・ミッチェルやジャハリ・スタンプリーも迎えて録音された。これは、アルバムだけに留まらない、Color of Noizeという新たなコンセプトのプロジェクト、パフォーマンスの始まりでもあるという。
 前作『The Second』は、基本的にはデリック・ホッジ一人で作り上げたアルバムだった。ベーシストのソロ・アルバムという枠には留まらず、多様な音楽性を描き出して、プロデューサー、作曲家、ミュージシャンという、自分の中にある3つの要素をアルバムの中で表現した。
 『Color of Noize』は、そこから更に前進し、アーティストとして、よりクリエイティヴでオープンなヴィジョンを持って制作された。「手放すこと(Letting Go)」がキーワードだという『Color of Noize』について語る、デリック・ホッジの最新インタビューをお届けする。



——『The Second』とは対照的に、『Color of Noize』がバンドと共にレコーディングされた理由を教えてください。

『Color of Noize』というのは大きな構想なんだよ。アルバムはあくまでも出発点。『Color of Noize』で表現したいのは、僕が何者かということだ。これまで僕がやってきた音楽、関わってきた音楽、その中には相反する要素もあった。だからいろんな定義や表現をされてきた。人生も経験もアートも、異なるもの、相反するものがたくさんあって、それを音楽で伝えようとしてきた。だから『Color of Noize』は「僕は何者なんだ?」「僕の音楽は何なのか?」といったクエッションマークを受け止める、ってことなんだと思う。サウンドのこと、ジャンルのこと、どこに自分はフィットするのか、そういったことを心配するんじゃなくて、自分に語りかけてくる音楽を作り、聴いてくれた人にもその人それぞれに語りかけるものにしたかった。どういう風に語りかけたとしても、それぞれが美しいのだと思うから。だからこそ『Color of Noize』はフルバンドでやりたかった。プロセスのキーワードはLetting Go(手放す)ってことだ。前作『The Second』はすべて一人で作った。何曲かでドラムを入れた以外、全部僕の頭の中にあるものだった。そうである必要があったんだ。でも今回はあらゆる意味で、全てを手放し、人がそれぞれ自分のものとして捉えるものにした。バンドもまさにその実践だ。全員が音楽とコンセプトを受け止めてくれた。結果、これは僕一人では絶対に作れなかったアルバムになったよ。

——曲作りの段階で、アルバムのコンセプトとなるものはありましたか?

スピリットとアイディアは2年以上前から頭の中にあったよ。それが次第に形を成すようになり、コンセプトになった。Letting Go、つまり自由を取り戻す、ということ。そのコンセプトと自分の歴史をこの1年でいろいろな形でショーケースして来た。去年の夏にはロンドンでColor of Noizeとしてパフォーマンスをした。共演したのはそれまで一度もやったことがないミュージシャンたち。パフォーマンスという意味では、それが一番最初に Color Of Noize というコンセプトが形となった例だ。モントレー・ジャズ・フェスティバルのアーティスト・イン・レジデンスに招聘された時も、Color of Noizeのパフォーマンスを行なったんだ。若いミュージシャンばかり集めてね。スタイルの差なんて恐れず、ジャズと呼ばれるものを演奏する。自分の中にある違うスタイルを見せるプラットフォームを作り、そこから前に進む。このアルバム『Color of Noize』もそういうことなんだ。

——レコーディングのプロセスで、これまでと変化した点はありますか?

ブルーノートという伝統あるプラットフォーム、スタイルと、今のモダンなパフォーミング・スタイルを合体させることを目指した。レコーディングは2日。ミュージシャンたちは当日まで曲を聴いていなかった。何テイクも演奏はしない。せいぜい1、2テイクだ。全員がスタジオに入り、スタジオの中はマイクがそこらじゅうで、トラディショナルなブルーノートのレコーディングだった。その瞬間を捉える、という意味でね。オーヴァーダブはあまりしない。ゲストは入れない。その場で即興的に起こることを信じ、その邪魔をしないことが何より大切だった。Letting Goを目指すなら、その時にレコーディングされたもの以外は手放し、そこにあるものを信頼するということだからね。だから今回は1曲も僕が一人でやってる曲はないよ。全員のスピリットを留めたかったんだ。


——マイク・ミッチェルとジャハリ・スタンプリーを抜擢した理由は?

マイク・ミッチェルには僕自身を見る気がするんだ。今回のメンバーは全員そうなんだが、特にマイクはそうだ。初めて彼のビデオを見た時、わずか12歳で、すでに凄かった。彼とやろうと決めたのも、シンプルな理由からさ。自分にとってヒーローと思える人たちは、僕にクリエイティヴなプラットフォームを用意してくれた。それだけでなく、さらに羽ばたけるチャンスをくれた。テレンス・ブランチャードもマルグリュー・ミラーもそうだった。無意識だったかもしれないが、その経験が今の自分を作り上げている。だから、僕もそれを受け継いで行くべきだと思ったんだ。ジャハリにとってはこれが初めてのアルバムだ。「You Could Have Stayed」でのソロ・ピアノは彼と会って15分くらいで、曲を覚えて弾いたものだ。ぜひアルバムに入れたかった。『Color of Noize』の何たるかを語っているからだ。

——唯一のカヴァー曲はウェイン・ショーター作の“Fall”でしたが、ショーターから受け継いだものも当然ありますよね。

僕の人生には、愛を見せてくれた人たちが何人かいる。そうする必要なんてなかったのに、惜しまずに与えてくれた人たちだ。彼らへの恩は絶対に忘れない。さっきも言ったけど、テレンス・ブランチャードはその一人だった。周りの連中が「何がジャズで何がジャズじゃないか」といったアートフォームの議論をしている時に、彼はありのままの僕らを受け入れ、「自分たちらしくいろ」と一切悪びれることなく、励ましてくれた。そのテレンスがしょっちゅうウェイン・ショーターの話をしてたんだ。僕自身、カレッジ時代に一番聴いたジャズのアルバムが彼の『Speak No Evil』とマイルスの『Nefetiti』だった。フランスでのあるライヴでウェイン・ショーターがゲストで出演したんだが、リハーサルに訪れたウェインは譜面も用意し、書き込みとかいろいろ準備をしてきていた。あのウェイン・ショーターなのに! 胡座をかくことを一切しないんだ。そのことが忘れられなくてね。『Color of Noize』では偉大なミュージシャンたち、僕らの前にいた人たちへのオマージュを捧げたいと決めていたんだ。単に演奏だけでなくスピリットが素晴らしい人たち。常に変化し、前に進むことをやめず、耳を閉じない人たち。ウェイン・ショーターはまさにその頂点だ。だから「Fall」をやった。

——あなたがアコースティック・ギターを弾いて歌う「New Day」は新たなチャレンジでしたか?

ああいうのも僕のバックグラウンドの一つなんだよ。一番最初に弾いた楽器はギターで、その後、ベースに転向した。「New Day」でのあのフォーキーなギターと歌は自然と出てきたものだったんだ。ゴスペル、フォークなどの人間の声でこそ伝えられる何か。あの曲では、一瞬時間を取って、そういった感情に触れたいと思った。アメリカン・ミュージックにおけるフォークの要素は、僕の歴史の一部だからね。僕という人間を作ってる要素が全て、何らかの形で表れるアルバムにしたいという思いがあったんだ。

——プロデューサー、作曲家、ミュージシャンという3つの要素が自分にはあると、以前話してくれましたね。今回はそれも手放したのでしょうか?

スタジオの中での作業という意味ではプロデューサーの部分は今回は少し手放している。だからドン・ウォズにいてもらったんだ。口で言うだけでなく、本当に実践できるように自分にも強く言い聞かせたし、ドンがいてくれたのは助かった。アイディアを考えるのは僕の頭の中だったとしても、アートを作るのは全員。プロデューサー、ソングライターの僕が考えるのはメロディと曲のスピリットと全体のシェイプだけど、それをどう演奏するかの部分に関して、今回は全く手放したんだ。彼らを信頼して任せたよ。


——今はライヴができない状況ですが、何か新しいアプローチを考えていますか?

この大変な状況こそ、まさに次なるステップだね。オーディエンスの前で『Color of Noize』の音楽を演奏できる日が待ち遠しいよ。ライヴで得られるオーディエンスからのエネルギーは他には変えがたい。でも、それができるようになるまでは、皆やれることをやらないと。週ごとに業界自体も変化を強いられてる。特にライヴ業界はね。僕もそれに適応し、ソーシャルメディアを使ったインタラクティヴな形での音楽の届け方を、今まさに考えているところだ。


■リリース詳細
デリック・ホッジ 『Color of Noize』

好評発売中
https://derrickhodge.lnk.to/ColorOfNoize

【収録曲】
1. The Cost (Derrick Hodge)
2. Not Right Now  (Hodge)
3. Little Tone Poem (Hodge)
4. You Could Have Stayed (Hodge)
5. Color of Noize (Hodge)
6. 19 (Hodge)
7. Fall (Wayne Shorter)
8. Looking At You (Hodge)
9. Heartbeats (Hodge)
10. New Day (Hodge)
11. You Could Have Stayed feat. Jahari Stampley (Hodge)

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