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ゆっくり、だけど、確実に。 〜福盛進也 音楽半生記〜 (第37回)


2019年に創立50周年を迎えたドイツの名門ECMレーベル。そのECMから昨年デビューを飾った日本人ドラマーの福盛進也。
15歳でドラムを始め、17歳の時に単身で渡米。その後、ブルックヘブン・カレッジ、テキサス大学アーリントン校を経て、バークリー音楽大学を卒業。10年間のアメリカでの活動後、2013年に拠点をミュンヘンに移し欧州各国で研鑽を積み、遂に念願のECMデビューを飾った福盛進也が、これまでの歩みを自ら綴る連載企画。


【第三十七章】―Everything I Love―

ドラムを本格的に始めて4年ほどが経った。23歳。

UTA(University of Texas at Arlington)に通い、1年があっという間に過ぎた。その頃には、UTAのビッグバンドJO(Jazz Orchestra)の2代目の監督となったBill Snodgrassを称え、その名前が付いた「Bill Snodgrass Award」を受賞したり、学校での評価もうなぎ上りだった。それを受賞したことにより、スカラシップを授与され、優秀な留学生のための特別措置として、州内学生と同じ「In-State Tuition」と呼ばれる授業料に変更された。つまり、およそ2/3ほどの授業料を免除してもらったのだ。

 
 

「Bill Snodgrass Award」を受賞

 

受賞をした際のコンサート(ゲストのSteve Owenと)

その後も、UTAのドラムラインにドラムセットを演奏する生徒が必要だということで参加し、PASICと呼ばれる世界最大のドラムとパーカッションのフェスティバルで演奏することになった。その中で、ドラムラインのコンテストがあり、僕らはなんと全米第2位の成績を挙げたのだ。その時にエド・シグペンに会い、ブラシの使い方を軽く教えてもらったり、とても良い思い出となった。

ただ、僕はそこで満足はしなかった、いや、できなかった。UTAは素晴らしい学校だと感じていたし、TimやDanを始めとする教師陣も大好きだ。だが、自分が成長するにつれ、もっとレベルの高いところで勉強したい、と思うようになった。BrookhavenからUTAに移った時のように、徐々に徐々に、物足りなさを感じ始めた。

その当時の気持ちを綴った文章が残っていた。少し恥ずかしいが、その時の正直な想いだ。

“この4年でどれだけ自分が成長したのか、最近よく周りの人に気付かせられる。日本に帰りジャム・セッションに参加すると絶賛され、仕事もやると言われた。先週、Brookhaven時代のドラムの先生のKeithと話をしてるときには、「ドラムのことを全く知らないときから見てきたが、4年間でこの上達ぶりは素晴らしいものだ。この前もうちのビッグバンドのドラマーはすごいと褒められた。ここまでよく来たものだ。」と声を掛けてくれた。気付けばUTAのトップ・ドラマーで2大ジャズスカラシップの一つも受け取り、ギグの数も増え続けてる。

でもまだ満足は全くしていない。音楽というものはある意味ずっとそういうものなのかもしれない。

今日は中学のころからの憧れだったBerkleeという名門校にアプライをした。アプリケーション(願書)はほとんど毎回質問がエッセイ方式で、今までの経歴や自分の音楽に対する思いを書かなければならなかった。それを書きながら、俺の音楽をやる理由は自分の才能なんだな、って思った。細かく言えば才能だけじゃない、音楽に対する情熱、楽しさも理由である。でも俺を奮い立たせてくれるのは、いつまでたっても自分の才能であり、自分を信じることだと思う。作曲をするといつも自分はなんて才能を持っているんだ、と思う。別に嫌味を言うわけでもない。それだけ音楽に自信があり、音楽以外の何も保険は無いということなのだ。失敗することなんてもともと考えていないし恐れてもいない。ただ自分の道を貫き通す、ただそれだけ。誰が何と言おうと納得するまで進み続ける。

だから、俺はこれからも自分のドラムで歌っていこうと思う。たくさんの気持ちを込めて自分を表現したい。人生の中で苦しいことやつらいこともたくさんあり、涙を流すことなんていくらでもある。俺は元々涙を流すのに抵抗が無いし、自分の弱い部分を見せられることが真の強さでもあり、涙を流せばその分表現が豊かになると思っている。涙だけではなく、喜び、怒りも時には必要なのである。その思いが自分の音楽になり、ドラムになり、シンバルになり、スネアになり、初めて音符になるのだと思う、そして、いくつもの曲が生まれてくるのだと思う。

長くなったが、4年間の上達以外にもたくさん気付いたことがある。ここまで音楽一本でやってこれたのは周りの人の支えがあり、それを理解してくれる人たちのおかげなんだと。俺は幸運な人間なんだと常に言い聞かせたいと思う。成功の秘訣はいつも才能だけでなく、運であり、周りの人々の支えなんだ。

この前日本に帰ったときにジャム・セッションに行き、絶賛された演奏を聴いてた両親の嬉しそうな顔を見て、自分まで踊りだしたくなるほど舞い上がった。それが、今までの音楽生活の中での一番の自分の成功であり、喜びだと思う。将来は自分が一番喜べるような演奏をすることを最終目標にしようと思っている。

だから、今までもこれからも支え続けてくれている両親に本当に感謝したい。音楽をやることに全く反対せずに、中学3年のときに入試を控えているくせにニュージーランドに語学留学をさせてくれたり、高3では、大学入試のことなど鼻から考えずに、自分の行きたいアメリカに1年交換留学させてくれたり、自分は最高の両親を持ったのだなと思っている。音楽科という理由でいつまで学生生活が続くか分からないけど、本当にありがとう。

いつか音楽で世界を変えてみせようと思う。

そう、遂にBerklee College of Musicに行く決心をしたのだ。


※記事中の動画は本人提供

(次回更新は8月3日の予定です)



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伊藤ゴロー、佐藤浩一との新ユニット
「land & quiet」のデビュー・アルバムがリリース。
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