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【連載】ゆっくりだけど、確実に 〜福盛進也 音楽半生記〜 (第41回)


2019年に創立50周年を迎えたドイツの名門ECMレーベル。そのECMから2018年にデビューを飾った日本人ドラマーの福盛進也。
15歳でドラムを始め、17歳の時に単身で渡米。その後、ブルックヘブン・カレッジ、テキサス大学アーリントン校を経て、バークリー音楽大学を卒業。10年間のアメリカでの活動後、2013年に拠点をミュンヘンに移し欧州各国で研鑽を積み、遂に念願のECMデビューを飾った福盛進也が、これまでの歩みを自ら綴る連載企画。


【第四十一章】―テキサス最後の夜―

ボストン行きを決意した僕は、アーリントンでの最後の日々を過ごした。

UTA (University of Texas at Arlington)では、この数年間の集大成として、ビッグバンドでのアルバムを制作することになった。3日間、昼の1時から夜の11時までの10時間、スタジオに篭りきりレコーディングをする。スタジオはUTAに入った当初に使ったCrystal Clear Sound。バンドとしての成長、そして僕自身の成長を試せる機会でもある。

本番。濃い3日間だったがあっけない程スムーズに進み終わった。というのも、やはりこの数年間、毎日共に音を出し過ごしてきた絆というものが大きかったのだろう。本当に最高のバンドだと感じた。「これでUTAでの演奏も最後か」と思うと少し寂しくもなる。レヴェルは関係なく、こんなに大人数のいい連中と演奏するのは、生きてるうちでこれが最後だろう。僕が一番成長したであろう時期に、このみんなと一緒にできたことは、何にも変えがたい宝物だ。いい思い出がたくさん。

 
スタジオにて

新たな旅の始まりである。最後の夜は、友達みんなに会いに行った。涙を恐れて別れを告げないよりも、いっそ泣いて、その特別な感情をたっぷりと堪能すればいい。その感情を味わう前と後では、あまりにも人間の大きさが違うように思える。最後に見た友の顔は寂しげで、声は皆温かく、僕がどれだけ幸運なのかを改めて知らされた。そして僕は、7年間の思い出と共に、テキサスを去った。

そして2008年、夏。僕はボストンにやってきた。アメリカ生活8年目のスタートだ。Berkleeではオリエンテーションが始まり、授業のレヴェル決めのテストやオーディションに、緊張感が高まってくる。学校のIDも作り、晴れてBerklee生となったのだ。

テストとオーディションの結果、かなりの数の授業を飛び級することができ、単位もたくさんもらえた。スケジュールを決めていくうちに、合計11クラスという、なかなかの授業の数となった。これまでやってきた音楽の、もっともっと細かく専門的なことをたくさん学べる。幅広く奥深く、単純にそれが嬉しかった。とにかく毎日が充実していた。ドラムの個人レッスンも、たった30分ながらUTAでの2年半のレッスンよりも多くのことを学べた気がした。Berkleeというところはすごいな~、と感動した。

 
ボストンのアパート

そうやって順調な滑り出しで毎日を過ごしているうちに、同じアンサンブルのギタリストから「セッションしよう」と声をかけられた。Berkleeで初めてのセッションだ、どんなことになるか楽しみだ。そして待ち合わせ時間に教室に行き、今日のセッションのメンバーと顔を合わせる。僕らの他にピアニストとベーシストがいた。そしてその二人は、Berklee卒業後長く一緒に時間を共にするヤマザキタケルと甲斐正樹だったのだ。と言っても、7年間もテキサスに住んでいた僕は、いつの間にか日本人を敬遠してしまう性格になってしまい、その後卒業するまでほとんど日本人と知り合うことは無かった(唯一タケルくんとはアンサンブルが一緒になり行動を共にしたのだが)。

そのセッションの時に演奏した曲を今でも覚えている。ビル・エヴァンスの演奏で有名な「How My Heart Sings」。この曲に出逢い、そこから今に至るまで何度も何度も演奏をしてきた大好きなスタンダードとなった。初めてのセッションで、今となってはとても大切な友人の二人に出逢い、大好きな曲にも巡り合い、とても思い出深い一夜だった。

友人といえばもう一人。実はテキサスから僕を追いかけてBerkleeに来た奴がいたのだ。同じドラマーとして親友でもあり、良きライバルとしてUTAで切磋琢磨したClintだ。ボストンに来ても彼との強い友情は続き、何かあればお互いに連絡をしたり、僕が心を許せる唯一の存在だった。


Clintとボストンで

新たな出逢い、親友との再会、とても面白い日常が始まった。そして僕は、遂にECMの音楽に出逢い、どっぷりと浸かることになる。そこから僕の人生は、また大きく変わっていく。せっかくBerkleeにやって来たのに、とんでもない行動を起こすことになったのだ。


※記事中の写真は本人提供


(次回更新は9月28日の予定です)



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伊藤ゴロー、佐藤浩一との新ユニット
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