COLUMN/INTERVIEW

【連載】ゆっくりだけど、確実に 〜福盛進也 音楽半生記〜 (第42回)


2019年に創立50周年を迎えたドイツの名門ECMレーベル。そのECMから2018年にデビューを飾った日本人ドラマーの福盛進也。
15歳でドラムを始め、17歳の時に単身で渡米。その後、ブルックヘブン・カレッジ、テキサス大学アーリントン校を経て、バークリー音楽大学を卒業。10年間のアメリカでの活動後、2013年に拠点をミュンヘンに移し欧州各国で研鑽を積み、遂に念願のECMデビューを飾った福盛進也が、これまでの歩みを自ら綴る連載企画。


【第四十二章】―宣言―

Berklee生として、そして音楽家として着実に成長しながら、慌ただしい学校生活を送っていた。初めてのセメスターで戸惑うこともたくさんあったが、レベルの高い周りの生徒を如何に無視し、自分を貫くかが重要だと感じていた。つまり、Berkleeに行くということは、技術的な面よりも、精神的にどれだけ準備が整っているかが大事なんだと気付いたのだ。結局最後に残っていくのは、自分の「声」を持った者だけである。

2008年も終わりに差し掛かった、ある冬の日。地下にある、学校のドラム専用練習室に行き、セッティングを始めた。防音室だが、周りのドラマーの音がたくさん聴こえてくる。その瞬間、異様な嫌悪感に苛まれた。みんなやっていることが同じだ。窓から見える他のドラマーを意識した、テクニック合戦にスピード勝負だった。「なんだ、このクソしょうもない見栄の張り合いは? こんなの音楽でもなんでもない」と、練習する気にもならず、足早に建物を出た。やっていることは難しくレベルが高いのかもしれないが、そこに意味を見出せなかった。そこで気が付いたのだ。今までヴィニー・カリウタみたいになりたいと目指していたけど、それは間違いだ。「俺はShinya Fukumoriだ。俺はShinya Fukumoriの音楽を追求しなければ」と。既にヴィニーがいるのにヴィニーになる必要は全く無い。一気にLAフュージョンに対する夢が冷め、寒い帰り道を歩きながら、自分という人間は一体何でできているのかを考えてみた。そこで僕は一つの答えに行き着いた。

数日後、僕はその答えを確かめるために、あるアンサンブルのリサイタルを観に行った。Berkleeの学生が学期末に行うリサイタルで、それも授業の一環だった。そして、その音楽を聴いて思った、「やっぱり俺がやりたい音楽はこれだ!」と。

ECM

僕はやっと分かったのだ、何をしたいのか。もともとパット・メセニーに一番影響を受け、演奏もオーソドックスなジャズよりも、空間系のものが得意だった。ずっとどこかに、ECMという言葉が僕の中に存在していたのだ。そして、そのリサイタルで確信することができた。僕はこういう芸術性の高い音楽をやりたかったんだ。今まで、漠然と「音楽を職業にする」という考えでやってきたが、そのディテールが見えた瞬間だった。

それからというもの、家にあるCDを漁り、持っていたECMのCDを聴きまくった。インターネットでECMに関する記事をたくさん読み、僕が好きそうなものがあれば購入し、その独特な世界観に浸かり始めた。その時にケティル・ビヨルンスタの『The Sea』に出逢い、その後今に至るまで世界一好きなアルバムと公言している。また、キース・ジャレットの『My Song』にも衝撃を受け、特に「Country」は3日間で100回以上も再生した。

  
『The Sea』と『My Song』


そして、僕はある宣言をする。2008年12月6日に、ブログにこう記している。

「ECM専属のアーティストになり自分の作曲した曲をレコーディングする。」

もちろん、ECMに専属契約というものが無いのを当時は知らなかったが、10年経った2018年の2月に、本当にそのECMからデビュー・アルバムを出せたことは、なんとも感慨深いもので一つの人生の到達点となった。

また、当時同じクラスで仲良くなったノルウェー出身のドラマーNiklasが、僕がセリア・ネルゴールが好きだったことをきっかけに、ノルウェーの音楽をいっぱい教えてくれたりもした。その時に知ったミュージシャンの一人がトリグヴェ・セイムで、まさか彼が自分のトリオの一員となることなんて、その時は全く想像にも及ばなかったのだが。

そうしているうちに、僕はECMのあるヨーロッパに行きたくてしょうがなくなってしまった。そして運も重なりタイミング良く、ドイツ・フライブルクに位置し、Beekleeが提携する小さな音楽学校へと留学できるコースの募集が2009年にあったのだ。1セメスターだけだが、ドイツに住み音楽をできる。ECMで頭がいっぱいの僕は「こんなチャンスはない!」と思い、その募集に申し込み、見事合格された。周りからは「なんでせっかくBerkleeに来てるのに、そんなレベルの低い学校に留学なんてするんだ!?」と否定されまくったが、僕にはそんな言葉は響かなかった。とりあえずドイツに行けば俺の勝ちだ、と思っていた。ヨーロッパの空気を感じ、何よりECMの本場で音楽をしてみたい、と。

というわけで、2009年の夏の終わり、僕はフライブルクへと渡った。


※記事中の写真は本人提供

(次回更新は10月19日の予定です)


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