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スウェーデンが生み出した音楽の天才が超絶技巧を披露 ダーティ・ループスが6年ぶりにリリースしたオリジナル作品に迫る

(文:佐藤英輔)



 ついに、ダーティ・ループスの新作がリリースされる。名クリエイター/プロデューサーにして米ヴァーヴ・レコードの会長であったデイヴィッド・フォスターの肝入りのもと発表したデヴュー作『ダーティ・ループス』から、なんと6年ぶり。セカンド・アルバムのレコーディングに入ったものの、メンバー間の意見の相違が顕在化して、活動休止に入ったというニュースが流れたこともあった。

 ファースト作で多大な支持を得たバンドだけに、普通ならきっちりと次作のリリース/プロモーションの予定が決められてしまうところ、彼らはそこから逃れた。面々が生き馬の目を抜くアメリカの音楽界から距離を置く、スウェーデンに住むミュージシャンたちであったというのが幸いしたのか否か。なんにせよ、3人は無理して作ることはせず、個人の音楽活動や生活を優先させることにした。だが、それは正しかったことは、新作『フェニックス』の仕上がりが示している。

 ヴォーカルとキーボードのジョナ・ニルソン。エレクトリック・ベースのヘンリック・リンダー。ドラムのアーロン・メルガルド。という、構成員はもちろん不動。ジョナは1人でシンフォニックなサウンドを作り出すとともに、伸びのあるハイトーンのヴォーカルで聞き手を魅了する。ヘンリックは音域の広さを持つ5〜6弦のエレクトリック・ベースを巧妙に操るとともに、ギタリスト不在であることをカヴァーするスラッピングのベース奏法も随時披露。そして、アーロンはと言えば、ブラインドで聞いたなら絶対に米国人の敏腕ドラマーだと思わせるとってもタイトで立体感を持つ叩き口でバンドの屋台骨を担う。そうした彼らのスキルの高さを知れば、面々が確かな音楽教育を受け、本国では腕利きのスタジオ・ミュージシャンをしていたという事実にも頷くはず。そんな3者が強い信頼関係のもと、ガチで重なる三位一体表現。それこそが、北の国からインターナショナルな音楽界に飛び出したダーティ・ループスの黄金の方程式である。

 だが、彼らの表現はそれを前面に出すのではなくメロディアスな楽曲を介することで、まずは親しみやすいビート・ポップ表現として受け手に届けられる。それこそがダーティ・ループスの強みであり、彼らをアルバム1作で人気者の座に押し上げてしまった理由だろう。一皮剥くと、そこには壮絶な技量やクリエイティヴィティが渦巻いている。しかし、それに留まらない、聞き手に両手を広げたポップ・ミュージックとしてアピールしてしまうというのがダーティ・ループス表現の肝であるのだ。
 



 さて、新作『フェニックス』は3人ががっちり噛み合う5曲で成り立つ。演奏、作曲、編曲、プロデュースのクレジットにはダーティ・ループスの名前が出され、当然録音は自国スウェーデンで行われている。その基本路線はファースト・アルバムを引き継いでいるが、しっかり時間をかけたことを知らせる変化も見て取れて、それが耳を引くのは間違いない。

 たとえばアルバムの1曲目に置かれた、ちょいセクシャルな比喩を持つエネルギッシュなラヴ・ソングの「ロック・ユー」を聞いてみよう。あれれ、ジョナのヴォーカルがよりソウルフルになっている! 聞く者はそう思わせられるはず。また、ジョナが歌声を重ねるコーラスも新たな感興をもたらす。
 さらに驚かされるのは、「ワーク・シット・アウト」と「ネクスト・トゥ・ユー」という続く2曲がなんと8分前後の尺を持つ曲であることだ。実は前作に入っていた曲はどれも3〜4分の長さを持つ曲であったから、これは大きな変化と言えるし、彼らの新たな創造意欲が注ぎ込まれていると指摘できる。



 たとえば、「ワーク・シット・アウト」はブラジルの民族打楽器であるビリンバウの音が基調に置かれ、どんどん曲種が広がっていく。そこには、冴えたストーリテリングの手腕あり。そして、少し静かなサウンドになった中盤には現代ジャズ・ピアノの第一人者であるブラッド・メルドーを思い出させるようなジョナのピアノ・ソロが入れられてもいる。新たなエスニック性やジャズ性も前に出した同曲は本当に聞くべきポイントが盛りだくさん。また、一方では「ブレイクダウン」のようなバラード美曲も新作にはある。
 そして、注目したいのが日本盤ボーナス・トラックとして収録された4曲だ。それらは、なんとインストメンタル。実は彼らがYouTubeに発表した曲群であるのだが、それらがまた興味深い。



 アヒルや牛の擬音も入る「オールド・アルマンド・ハッド・ア・ファーム」はバンジョーやスティール・ギターのような音も確認できて、彼らならではの“アメリカーナ”曲と言いたくなる? その曲をはじめ、どれも遊び心とクリエイティヴィティに満ちていて、彼らのもう一つの顔を伝える楽曲群と言えそうだ。
 四方八方に広がる豊穣な表現を、3人は送り出そうとしている。そうした『フェニックス』に触れていると、彼ら一流の風通しの良さと、審美眼の高さ、しなやかな好奇心の在りかを痛感させられること請け合い。そして、それらは“Loopified”と海外では形容される、彼ら一流の鮮やかなポップネスに鮮やかに結実する。
 3人を見初めて送り出したデイヴィッド・フォスターはすでにヴァーヴを離れた。だが、現在はさらに米国ポピュラー音楽界の大物であるクインシー・ジョーンズが彼らを応援。音楽作りは3人の手に委ねられているが、ダーティ・ループスの現在のマネージメントは“ビッグ・Q”のプロダクションが行なっている。あぁダーティ・ループス、前途洋々なり。


■リリース詳細
ダーティ・ループス 『フェニックス』

リリース日:2020.11.18
品番:UCCJ-2188(SHM-CD)  
価格:\2,860税込 
https://jazz.lnk.to/DirtyLoops_PhoenixPR

【収録曲】
01. ロック・ユー / Rock You
02. ワーク・シット・アウト / Work Shit Out
03. ネクスト・トゥ・ユー / Next To You
04. ワールド・オン・ファイヤー / World On Fire
05. ブレイクダウン / Breakdown
06. オールド・アルマンド・ハッド・ア・ファーム / Old Armando Had A Farm*
07. ビトゥン・バイ・ザ・キトゥン / Bitten By The Kitten*
08. コーヒー・ブレイク・イズ・オーヴァー / Coffee Break Is Over*
09. ピンク・パワー / Pink Power*
*日本盤ボーナス・トラック

【デラックス・エディション Blu-ray収録内容】
01. ロック・ユー
02. ワーク・シット・アウト
03. ネクスト・トゥ・ユー
04. ワールド・オン・ファイヤー (マルチ・アングル)
05. ブレイクダウン
06. オールド・アルマンド・ハッド・ア・ファーム
07. ビトゥン・バイ・ザ・キトゥン
08. コーヒー・ブレイク・イズ・オーヴァー
09. ピンク・パワー


■ダーティ・ループス リンク
公式サイト: https://www.universal-music.co.jp/dirty-loops/
Twitter: https://twitter.com/DirtyLoops
Facebook: https://www.facebook.com/dirtyloopsofficial
Youtube: https://www.youtube.com/user/dirtyloops