PICK UP

【連載】Sampling BLUE NOTE 第1回 Donald Byrd / Dominoes



“史上最強のジャズ・レーベル”と称されるブルーノート。その一方で、“最もサンプリングされてきたジャズ・レーベル”と言っても過言ではない。特に1970年代のBNLA期に発表されたソウルフルかつファンキーな作品は、1980年代以降ヒップホップやR&Bのアーティストによって数多くサンプリングされた。このコラムは、ジャズだけでなくクラブ・ミュージックにも造詣の深いライターの小川充が、特に有名な20曲を厳選し、その曲の魅力やサンプリングされて生まれた主要トラックを解説する連載企画(隔週更新)。

文:小川 充


【第1回】

Donald Byrd / Dominoes
ドナルド・バード「ドミノス」
AL『プレイシズ・アンド・スペイシズ』収録



◆サンプリング例
DJ Jazzy Jeff & The Fresh Prince / Brand New Funk
Stetsasonic / Talkin’ All That Jazz (Dominoes Mix)
Carleen Anderson / True Spirit (Domino Mix)


ジャズ・レーベルの中でも<ブルーノート>はサンプリングの宝庫である。ヒップホップやR&Bなどでジャズの楽曲がサンプリングされる場合、ビートを作り出しやすいという理由で1960年代後半から1970年代にかけてのジャズ・ファンクが多く用いられるのだが、<ブルーノート>の特にLA時代はそうした作品が多いのである。たとえばLA時代を代表するプロデューサーのラリーとフォンスのマイゼル兄弟が手掛けた作品群がまず浮かぶが、本コラムの第1回は彼らスカイ・ハイ・プロダクションズの作品から進めたい。

スカイ・ハイ・プロダクションズの最高傑作の一枚がトランペット奏者ドナルド・バードの『Places And Spaces』(1975年)である。バードの演奏というより、コーラスやウェイド・マーカスのストリングス・アレンジまで含めたトータル・サウンドが優れていて、1970年代半ばらしいジャズ、ファンク、ソウルがクロスオーヴァーした作品だ。バック演奏もハーヴィー・メイソン、チャック・レイニー、スキップ・スカボローなど、当時最強のスタジオ・セッション・ミュージシャンが固めている。このアルバムからシングル・カットされた人気曲「Dominoes」は、DJジャジー・ジェフ、アイス・キューブ、トニー・タッチ、スヌープ・ドッグ、DJシャドウらヒップホップ勢によって20数曲もサンプリングされた。一番古いのがDJジャジー・ジェフ&ザ・フレッシュ・プリンスの「Brand New Funk」(1988年)で、ヒップホップの歴史ではオールド・スクールからニュー・スクールへの転換期、デ・ラ・ソウルやア・トライブ・コールド・クエストなど新世代が台頭してきた頃である。

Donald Byrd / Dominoes



DJ Jazzy Jeff & The Fresh Prince / Brand New Funk



同時期にステッツァソニックも「Talkin’ All That Jazz」(1988年)のその名も“Dominoes Mix”というヴァージョンで使用するが、この曲は当時のUSのジャズ・ラップとUKのアシッド・ジャズを繋ぐ曲でもあった。アシッド・ジャズの人気グループのヤング・ディサイプルズのシンガー、カーリン・アンダーソン(ジェイムズ・ブラウン一門の歌姫だったヴィッキー・アンダーソンの娘)がソロ転向後にリリースした「True Spirit」(1994年)でも“Domino Mix”でサンプリングしていて、この曲がいかにアシッド・ジャズやレア・グルーヴ・シーンでも愛されていたかがわかる。この曲はだいたいチャック・レイニーのベース・ラインがサンプリングされることが多くて、DJの耳のつけどころがどこにあるのかを示す一例でもある。

Stetsasonic / Talkin’All That Jazz (Dominoes Mix)



Carleen Anderson / True Spirit (Domino Mix)




関連記事
udiscovermusic.jp
ブルーノートとヒップホップの関係:最高峰のジャズ・レーベルは、いかにして最先端の音を受け入れ形成し続けているか
https://www.udiscovermusic.jp/stories/blue-note-and-hip-hop-influence