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【連載】スタンダード名曲ものがたり 第2回 枯葉



世の中に数多あるスタンダード・ナンバーから25曲を選りすぐって、その曲の魅力をジャズ評論家の藤本史昭が解説する連載企画(隔週更新)。曲が生まれた背景や、どのように広まっていったかなど、分かりやすくひも解きます。各曲の極めつけの名演もご紹介。これを読めば、お気に入りのスタンダードがきっと見つかるはずです。

文:藤本史昭


【第2回】

枯葉
Autumn Leaves
作曲:ジョゼフ・コズマ
作詞:ジャック・プレヴェール
英語詞:ジョニー・マーサー
1945年


『天井桟敷の人々』で有名なマルセル・カルネの監督作品に、イヴ・モンタンが主演した『夜の門』という映画があります。その中でモンタンが鼻歌を歌うシーンがあるのですが、その歌こそ今回ご紹介する「枯葉」。スタンダードの中でも1、2を争う大人気曲が、はじめて公の場に登場した瞬間です。

作曲したのはハンガリー生まれのジョゼフ・コズマ。コズマは映画の前年、バレエ用に「枯葉」の原型となる曲を書いていたのですが、それを気に入った詩人のジャック・プレヴェールが歌詞をつけ、自分が脚本を担当していた『夜の門』で使った、というのが「枯葉」誕生の顛末です。

ところがこの曲、当初はまったく評判にならなかった。映画自体が地味で興行成績が振るわなかったのだから当然です。でもモンタンはあきらめきれなかったのでしょう。彼は機会あるごとに「枯葉」を歌い続け、その甲斐あって曲は次第に認知されるようになります。決定的となったのは、当時注目を集めていたジュリエット・グレコがカヴァーしたこと。それによって「枯葉」は、フランス中で大ヒットすることになるのです。

その噂はほどなくアメリカにも伝わります。キャピトル・レコードの創始者のひとりで作詞家のジョニー・マーサーは自ら英語詩をつけ、それをビング・クロスビーやナット・キング・コールが歌いました。またロジャー・ウィリアムスはピアノをフィーチャーしたインスト版を録音。これは全米ヒットチャートで4週連続1位を獲得し、いよいよ「枯葉」はアメリカでも広く知られるようになったのです。

前回の「オール・ザ・シングズ・ユー・アー」同様、この曲もコード進行が整然としています。それだけに解体/再構築しやすいのでしょう、新旧のジャズ・ミュージシャンたちが実に様々なタイプの演奏を残しています。速いの遅いの。叙情的なのクールなの。オーソドックスなのフリーなの。――現代の「枯葉」をきいたら、さぞやコズマは驚くことでしょう。


●この名演をチェック!

キャノンボール・アダレイ&マイルス・デイヴィス
アルバム『サムシン・エルス』(Blue Note)収録


ジャズにおける「枯葉」の決定版のひとつ。実質上のリーダーであるマイルスのむせび泣くようなトランペットと、続くキャノンボールの艶やかなサックスのコントラストが見事です。途中に挟まるハンクのピアノも真珠のような美しさ。




ビル・エヴァンス・トリオ
アルバム『ポートレート・イン・ジャズ』(Riverside)収録


メンバーが互いの音に反応して演奏を作り上げていくインタープレイの手法を駆使して、従来の「枯葉」のイメージを大きく覆してみせた名演。速いテンポに乗せて、3者が絡み合いながら音楽が生成されていく様は実にスリリングです。