COLUMN/INTERVIEW

石若駿が語る、トニー・アレンとの共演エピソードと遺作の「新しさ」



昨年4月30日に亡くなった「アフロビートの帝王」トニー・アレン。彼の遺作とも位置付けられるニュー・アルバム『ゼア・イズ・ノー・エンド』がリリースされた。ヒップホップの要素を大胆に取り入れ様々な若手アーティストをフィーチャーするというこれまでで最も冒険的とも言える内容が大きな反響を呼んでいる。6月2日に日本盤が発売された本作からも読み取れるように彼は現代の若手アーティストのムーヴメントにも呼応し大きな影響を及ぼしているが、その若手アーティストたちは彼のドラム、そして音楽をどのように捉えているのか。自身のバンドAnswer to Rememberを率いる傍ら、くるり、Millennium Paradeなど多くのライブ・作品に参加している現代のファースト・コール・ドラマーである石若駿が、トニーとの共演ライブでの貴重なエピソードなどを交えて詳細に語ってくれた。

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今は亡きトニーのドラミングが、これからの時代の新しい音楽にどんどんアップデートされていくことはとても興味深いなと思いました。トニーのグルーヴはフレッシュでクールで、現代のドラムのmixの質感も相まって、彼自身の人生を通して今も尚、音楽の歴史を進めていることの功績の大きさ、深さを改めて感じられます。

(「スタンブリング・ダウン feat. サンパ・ザ・グレイト」)

トニーが亡くなる一年前、2019年にツインドラムでライブを行わせていただきました。
優雅な佇まいでかっこよく、極めて脱力された音色、キックのビーターが打面に当たる速さとダイナミクス、奏者の会話を紡ぐようなフィルイン、ルーツの言語を強く感じるフレーズの数々。最初にフィルインを生で聴いたときに小節のどこからはじまっているか全然わからなくて驚きました。それでいてずっとその時の音楽の正解を導き出すかのようなプレイに驚愕しました。音量もとてもコントロールされていて、マイクやコンプを通してのドラムの鳴り方にとても感銘を受けました。その音量バランスが本作品のドラムの質感に絶対的に生きているように感じます。ライブ時のドラムのチューニング的には、バスドラがタイトに作ってあり、タムはほぼノーミュートで、余韻が長く、フィルインのフレーズがきれいにピッチと共に繋がるような印象でした。
シンバルはピング音が細かく綺麗に鳴るようなものをチョイスしていました。絶妙なタッチの洗練されたシンバルの澄んだ音が会場に響き渡っていました。

(2019年にブルーノート東京で行われた共演ライブは、こちらの映像で一部見ることが出来る)

ライブのリハーサル後、僕の演奏に対して、「もっともっとリラックスして」とアドバイスされ、ライブ中もこちらを見ながら「こうやって演奏するんだよ」と、音色やフレーズで大切な稽古を受けているように感じた場面もありました。アート・ブレイキーのトリビュート・ライブでしたが、とある曲のドラムソロトレードでギラギラのサングラス越しに笑顔が溢れて楽しそうだったのを見て、こちらも嬉しさが倍増でした。
トニーのドラミングを隣で体感できたことは僕の人生にとってとても大きな財産になりました。

(“Wolf Eats Wolf”)

最近トニーの音に出くわしたのは、昨年夏にKing Gnuの勢喜遊くんとドライブした時。聴きながら車の中でカッケーーーと言いながら盛り上がった思い出があります。
とにかく、トニーのドラミングはこの先もどんどんリリースされて、皆さんが絶対耳にすることになるなと感じました。そして、これまでのトニーのドラミングの息吹きが、これから生まれる新しい音楽を、どんどん押し進めて行くことになるなと思います。素晴らしい演奏に感謝してこの文を締めくくろうと思います。

文:石若駿


■トニー・アレン ニュー・アルバム『ゼア・イズ・ノー・エンド』

発売中 UCCQ-1137 ¥2,860(税込)
https://tony-allen.lnk.to/ThereIsNoEnd

収録曲:
01. トニーズ・プレリューディアム
Tony’s Praeludium
02. スタンブリング・ダウン (feat. サンパ・ザ・グレイト)
Stumbling Down (feat. Sampa The Great)
03. クラッシュド・グレープス (feat. ロード・ジャー=モンテ・オグボン)
Crushed Grapes (feat. Lord Jah-Monte Ogbon)
04. トレ・マニフィーク (feat. ツナミ)
Très Magnifique (feat. Tsunami)
05. マウ・マウ (feat. ナー・イート)
Mau Mau (feat. Nah Eeto)
06. クーンタ・キンテ (feat. ゼルーパーズ)
Coonta Kinte (feat. Zelooperz)
07. リッチ・ブラック (feat. コリアタウン・オディティ)
Rich Black (feat. Koreatown Oddity)
08. ワン・インナ・ミリオン (feat. ラヴァ・ラ・ルー)
One Inna Million (feat. Lava La Rue)
09. ギャング・オン・ホリデイ (エム・アイ・ゴー・ウィー?) (feat. ジェレマイア・ジェイ)
Gang On Holiday (Em I Go We?) (feat. Jeremiah Jae)
10. ディア・イン・ヘッドライツ (feat. ダニー・ブラウン)
Deer In Headlights (feat. Danny Brown)
11. ハート・ユア・ソウル (feat. ネイト・ボーン)
Hurt Your Soul (feat. Nate Bone)
12. マイ・オウン (feat. マーロウ)
My Own (feat. Marlowe)
13. コズモシス (feat. ベン・オクリ & スケプタ)
Cosmosis (feat. Ben Okri & Skepta)
14. ゼア・イズ・ノー・エンド
There’s No End
15. コズモシス (インストゥルメンタル) ※日本盤限定ボーナス・トラック
Cosmosis (Instrumental)


【トニー・アレン プロフィール】
1940年、ナイジェリア生まれのドラマー、作曲家。
アート・ブレイキーなどのジャズ・ドラマーから影響を受け、1964年にフェラ・クティのバンドのオーディションに合格。以降彼の右腕として活動を開始。独特のグルーヴでアフロビートの確立に大きく寄与した。
1970年代にクティはアフリカ70を結成。彼のプロデュースのもと3枚のアルバムを制作し、トニーは全ての作品に参加した。
1980年代からはクティの元を離れ、自身のバンド「トニー・アレン・アンド・アフロ・メッセンジャーズ」を結成。アルバム『Discrimination』を制作後、パリへ移住する。
1990年代以降は主にセッション・ミュージシャンとして活動。ブラーのデーモン・アルバーンやレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリー、ザ・クラッシュのポール・シムノンらと「The Good, the Bad and the Queen」を制作するなど多くのアーティストと共演し活躍を続け、ブライアン・イーノをして「史上最高のドラマー」と言わしめた。
2012年にはデーモン・アルバーン、フリーと「Rocketjuice and the Moon」を結成してアルバムをリリース。晩年はアート・ブレイキーのトリビュートやジェフ・ミルズとのコラボレーションなど冒険心溢れるプロジェクトを展開。
2020年4月30日、パリで死去。79歳だった。


【トニー・アレン各種リンク】
ユニバーサル・ミュージック:
https://www.universal-music.co.jp/tony-allen/
本国公式サイト:
http://tonyallenafrobeat.com/
Twitter:
https://twitter.com/t_allenafrobeat
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