COLUMN/INTERVIEW

【連載】Sampling BLUE NOTE 第9回 Eddie Henderson / The Kumquat Kids


“史上最強のジャズ・レーベル”と称されるブルーノート。その一方で、“最もサンプリングされてきたジャズ・レーベル”と言っても過言ではない。特に1970年代のBNLA期に発表されたソウルフルかつファンキーな作品は、1980年代以降ヒップホップやR&Bのアーティストによって数多くサンプリングされた。このコラムは、ジャズだけでなくクラブ・ミュージックにも造詣の深いライターの小川充が、特に有名な20曲を厳選し、その曲の魅力やサンプリングされて生まれた主要トラックを解説する連載企画(隔週更新)。

文:小川 充


【第9回】
Eddie Henderson / The Kumquat Kids
エディ・ヘンダーソン / ザ・カムカット・キッズ
AL『サンバースト』収録




◆サンプリング例
Hexstatic / Kids Can Dance


1973年のハービー・ハンコックとザ・ヘッドハンターズの『Head Hunters』の登場は衝撃的で、ジャズ界のみならずさまざまな分野に多大な影響を及ぼした。以降ジャズとファンクの融合、エレクトリックな楽器群の導入はスタンダードなものとなっていき、ヘッドハンターズ・スタイルのアーティストや作品が次々と生まれていく。トランペット奏者のエディ・ヘンダーソンもそうしたひとりで、もともとハービー・ハンコックのバンドでキャリアを積んできた。初期の彼はエレクトリック・マイルスに影響を受けたスタイルで、1973年の初リーダー・アルバムの『Realization』はハンコックはじめ、ヘッドハンターズのサックス奏者のベニー・モウピンらの助けを得てリリースしている。

1975年に<ブルーノート>へ移籍して放った『Sunburst』も、ヘッドハンターズのメンバーではモウピンのほかにドラマーのハーヴィー・メイソンが参加し、キーボードはハンコックではなくジョージ・デュークだが、ハンコックの『Sextant』(1973年)の録音メンバーがほぼ再集結した感じだ(『Sextant』でヘンダーソンはムガンガ名義で演奏していた)。宇宙をテーマにしたコンセプトも、当時のハンコックの方向性に影響を受けたものと言える。プロデュースはスキップ・ドリンクウォーターが行っているのだが、彼はゼンブ・プロダクションを設立してノーマン・コナーズの一連の作品を制作してきた人物である。ヘンダーソンはドラマーのノーマン・コナーズのグループでもいろいろ演奏してきており、ドリンクウォーターはそうした方面からの起用だろう。ドリンクウォーター・プロデュースによるコナーズの『Dance Of Magic』(1972年)、『Dark Of Light』(1973年)、『Love From The Sun』(1973年)にはヘンダーソンのほかにハンコックも参加と、いろいろなところで繋がっているのだ。

収録曲では「The Kumquat Kids」がまさにヘッドハンターズの演奏を想起させるもので、シンセ・ベースのリフは『Head Hunters』の「Chameleon」でのそれを発展させたものと言えよう。メイソンのドラムはファンク・ビートを軸に安定したリズムを供給するもので、サンプリングの視点で見るととても使いやすい。タイトで安定していて重低音が効いているのだ。このビートとシンセ・ベースのうねりが生み出すグルーヴは絶品で、ヘックスタティック、バスドライヴァー、パッジー、リベラル・シマーリングなどがサンプリングしている。この中ではヘックスタティックの「Kids Can Dance」が原曲のイメージや特徴をうまく引き出して使っている。ヘックスタティックはUKの<ニンジャ・チューン>に所属するトリップ・ホップ系のユニットで、「Kids Can Dance」を収録したアルバム『Rewind』(2000年)ではロボット的なデジタル・サウンドとブレイクビーツを結び付けていた。「The Kumquat Kids」のようなクセのある曲は、エレクトロな持ち味の彼らのようなユニットがもっともハマる。もちろん、タイトルの中の“Kids”も引用によるものだ。

Eddie Henderson / The Kumquat Kids



Hexstatic / Kids Can Dance


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