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【ライヴ・レポート】ジョン・コルトレーン95回目の誕生日を祝うスペシャル・イベント「Re:コルトレーン」



文:佐藤英輔
写真:古賀恒雄

インパルス・レコード創立60周年記念ライヴ・シリーズ vol.2「Re:コルトレーン」
featuring 馬場智章、西口明宏、中島朱葉、松丸契、デイヴィッド・ブライアント、須川崇志 & 石若駿 with special guest 日野皓正
9月23日(木・祝) ブルーノート東京にて開催


『ストールン・モーメンツ レッド・ホット+クール』(GRP)という、HIV援助運動を目的とする1994年に発表された2枚組のコンピレーションがある。それは、“戦うジャズ”レーベルというイメージも持つインパルスを題材に、ドナルド・バード(グールーのラップ入り)、Us3(サックスはジョシュア・レッドマン)、ザ・ルーツ(ヴァイブラフォン奏者のロイ・ロアーズをゲストに迎える)、ブランフォード・マルサリス(「至上の愛」を18分の尺で演奏)、ドン・チェリー他が曲を出し合う内容だった。

そして、そこには当時インターナショナルな活動をしていた日本のDJチームであるユナイテッド・フューチャー・オーガニゼイションも参加。そこで彼らはオリヴァー・ネルソン曲「ストールン・モーメンツ」をリクリエイトしていたが、発注時にポリグラム(当時)から言われたのは、(インパルスのソースにおいて)ジョン・コルトレーン以外は何をサンプリングしても構わない、ということであったという。

かように、ジョン・コルトレーンは別格、聖域にある存在なのである。

インパルス・レコード創立60周年に際し、ブルーノート東京を舞台とする特別ライヴ企画の第2弾が9月23日に行われた。掲げられた表題は、「Re:コルトレーン」。ちょうどこの日はコルトレーンの生誕日で、彼が生きていたら95歳になるという。

ステージに上がったのは、テナー・サックスの馬場智章と西口明宏 、アルト・サックスの中島朱葉と松丸契、今は東京で活動している米国人ピアニストのデイヴィッド・ブライアント、ダブル・ベースの須川崇志、ドラムの石若駿という秀英たち。皆、堂々自分を出す。まとめ役は、黒田卓也たちとニューヨークでJ-Squadを組んでもいる馬場がした。

 


彼らはテーマ部を提示した後に順繰りにソロを回すというクリシェに陥ることなく、曲によりオーダーや組み合わせを変えたり(松丸のソロの際は石若とのデュオになったりもした)もし、きちんとコルトレーンが抱えていた形而上を今の我々に置き換えて表現するのだという意思が随所に顕れる。

面々が取り上げたのは「ブルー・トレイン」(1957年)、「至上の愛 パート1:承認」と「同 パート2:決意」(1965年)、「ナイーマ」(1960年)、「モーメンツ・ノーティス」(1957年)。そして、アンコールは近年発掘された1963年録音の「アンタイトルド・オリジナル 11383」。

コルトレーンの最初の奥さんの名前が冠された「ナイーマ」とソロ部分はブルースとなったアンコール曲にはゲストの日野皓正も加わり、快活にトランペットを吹く。ずっと年長な彼だが、アンコール時には後横で踊っていた。

 


そんな7人(+1人)の背後には、そのステージ上での勇姿が時にグラフィック処理を施されて映し出され、さらにはインパルス・レコード60周年のロゴが重ねられる。普段、この会場ではそういう映像ディレクションが取られることはない。だが、この特別プロジェクトの趣旨を明快に具視化するその作法に、ぼくは膝を打ってしまった。

時代背景も人々の意識も、巷で溢れている音楽も、コルトレーンが活動した頃とはまったく異なる。しかし、ジャズをジャズたらしめる衝動や流儀やコルトレーンに顕著な自分の個性で時代を切り開きたいという大志は生き続け、それは今の輝きをまとうジャズ・キャッツによって受け継がれる……。それこそが、今回示されたテーマではなかったか。

ジャズたるダンディさや滋味を目いっぱい抱えたコルトレーンの楽曲とジャズとしての威厳やスリルを抱えまくった彼のブロウに敬意を拝しつつ、今のジャズ界に生きる自分たちを仁王立ちさせる! ああインパルス、ああコルトレーン。そのかけがえのない真価は、今のヴァイブとともに生き続ける。