COLUMN/INTERVIEW

【連載】Sampling BLUE NOTE 第17回 Reuben Wilson / Ronni’s Bonnie


“史上最強のジャズ・レーベル”と称されるブルーノート。その一方で、“最もサンプリングされてきたジャズ・レーベル”と言っても過言ではない。特に1970年代のBNLA期に発表されたソウルフルかつファンキーな作品は、1980年代以降ヒップホップやR&Bのアーティストによって数多くサンプリングされた。このコラムは、ジャズだけでなくクラブ・ミュージックにも造詣の深いライターの小川充が、特に有名な20曲を厳選し、その曲の魅力やサンプリングされて生まれた主要トラックを解説する連載企画(隔週更新)。

文:小川 充


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【第17回】
Reuben Wilson / Ronni’s Bonnie
ルーベン・ウィルソン / ロニーズ・ボニー
AL『オン・ブロードウェイ』収録



◆サンプリング例
Us3 / I Got It Goin’ On


1980年代後半にイギリスでレア・グルーヴのムーヴメントが巻き起こった頃、いろいろなコンピがリリースされ、それを指針にDJたちはレコードを掘っていった。ディスク・ガイドも、ましてやネットもない頃で、そもそもどんなレコードが眠っているのかも知られていない時代だったので、そうしたコンピが一番の教科書だったのである。

そんなコンピの一枚に、ソウルやファンク系で定評のある<チャーリー>が1987年にリリースした『Got To Get Your Own』があった。後にヤング・ディサイプルズを結成するマルコとフェミがコンパイルに携わっていて、「Some Rare Grooves」というサブ・タイトルにも見られるように初めてレア・グルーヴを意識したコンピであった。

アルバム・タイトルとなった「Got To Get Your Own」はルーベン・ウィルソンの曲で、1975年に<カデット>からリリースされたアルバムのタイトル・トラックである。この曲はレア・グルーヴでの人気の沸騰はもちろん、続いて巻き起こるアシッド・ジャズにも重要な影響をもたらしたナンバーである。

オルガン奏者のルーベン・ウィルソンはジャズとR&Bやポップスを交えた演奏を行い、ロサンゼルスやラスヴェガスを拠点に活動していた。その後ニューヨークに出てきて活動し、ジャズやR&Bから次第にディスコ方面にも進み、ファットバック・バンドで1年ほど演奏していたこともある。

1980年代以降は表舞台からほとんど忘れ去られた存在となってしまっていたが、「Got To Get Your Own」によってDJたちから再注目されるようになり、<ブルーノート>や<グルーヴ・マーチャント>に残したアルバムが発掘されていく。そして自身もプレイヤーとして復活し、1990年代後半から2000年代に入ってグラント・グリーンの息子やかつての盟友のメルヴィン・スパークスらと共演した録音を残している。

ウィルソンは<ブルーノート>に全部で5枚のアルバムを残しているが、『On Broadway』はその冒頭を飾る一枚で、同時にデビュー・アルバムでもある。

録音メンバーはマルコム・リディック(ギター)、トミー・デリック(ドラムス)、トレヴァー・ローレンス(テナー・サックス)。あまり著名なプレイヤーたちではないが、ローレンスはマーヴィン・ゲイと交流の深いミュージシャンで、1969年にはポール・バターフィールド・ブルース・バンドにも参加している。ラテン・ジャズ・クインテットのメンバーだったデリックは昔からウィルソンとコンビを組んで活動しており、1970年にふたりでワイルデア・エキスプレスというR&Bユニットを組んだこともある。

そうしたメンバー構成からわかるようにR&B色の強い演奏で、ドリフターズの大ヒット曲である表題曲の「On Broadway」はじめ、マーヴィン・ゲイの「Ain't That Peculiar」やアレサ・フランクリンの「Baby, I Love You」などをカヴァーしている。そうした中で唯一のオリジナル曲となるのが「Ronnie’s Bonnie」で、アルバムの中でもっともファンク色の濃い演奏である。

ウィルソンのハモンド・オルガンはワウ・ペダルを効果的に用い、リズミカルで歯切れがよい演奏を行うのが持ち味である。そしてローレンスのR&B色の強いテナー・サックス、デリックが叩き出す乾いたスネアの音、メルヴィン・スパークスやグラント・グリーンにも通じるリディックのアーシーなギターによって、「Ronnie’s Bonnie」は極めてグルーヴィーなナンバーとなっている。

Reuben Wilson / Ronni’s Bonnie


この「Ronnie’s Bonnie」をサンプリングした曲として、Us3 (アス・スリー)の「I Got It Goin’ On」が知られる。1993年の<ブルーノート>からのデビュー・アルバム『Hand On The Torch』の収録曲で、シングル・カットもされている。もともとUs3はグラント・グリーンの音源を使った海賊盤をリリースして、それに目をつけた<ブルーノート>のスタッフが逆に契約のオファーをし、自社音源のサンプリングの許可を出して作らせたのが『Hand On The Torch』である。

「I Got It Goin’ On」は「Ronnie’s Bonnie」のトラックを軸にサックス、トランペット、トロンボーンの生演奏を加え、さらにラップを乗せるというジャズ・ラップの元祖と言えるナンバーである。そして、Us3の「I Got It Goin’ On」によってヒップホップのシーンでもウィルソンは周知されるようになり、グールーによる1995年の『Jazzmatazz』第2弾にもゲスト参加し、「Young Ladies」という曲でケニー・ギャレットと共演したのだった。

Us3 / I Got It Goin’ On