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【連載】Sampling BLUE NOTE 第16回 Jimmy McGriff / Back On The Track


“史上最強のジャズ・レーベル”と称されるブルーノート。その一方で、“最もサンプリングされてきたジャズ・レーベル”と言っても過言ではない。特に1970年代のBNLA期に発表されたソウルフルかつファンキーな作品は、1980年代以降ヒップホップやR&Bのアーティストによって数多くサンプリングされた。このコラムは、ジャズだけでなくクラブ・ミュージックにも造詣の深いライターの小川充が、特に有名な20曲を厳選し、その曲の魅力やサンプリングされて生まれた主要トラックを解説する連載企画(隔週更新)。

文:小川 充


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【第16回】
Jimmy McGriff / Back On The Track
ジミー・マクグリフ / バック・オン・ザ・トラック
AL『エレクトリック・ファンク』収録



◆サンプリング例
O.C. / Ma Dukes
Jazz Liberatorz / Music In My Mind (Part 2)
Walkin’ Large / Reachin’ (For My People)


レア・グルーヴやアシッド・ジャズの文脈で人気の高いオルガン奏者には、ジミー・スミス、ロニー・スミス、ジョニー・ハモンド・スミスのスミス3人衆を筆頭に、ジャック・マクダフ、リチャード・グルーヴ・ホルムズ、ルーベン・ウィルソン、チャールズ・アーランド、チャールズ・カイナード、レオン・スペンサー、シャーリー・スコットなどが挙げられる。

彼らのアルバムは<ブルーノート>と<プレスティッジ>から多くリリースされ、そうした作品はソウル・ジャズやオルガン・ジャズと呼ばれた。ジミー・マクグリフもそれらオルガン・ジャズを代表するプレイヤーで、<ブルーノート>にも3枚のアルバムを残している。もともとジミー・スミスの幼馴染で彼の<ブルーノート>での活躍に刺激を受け、また妹の結婚式でのリチャード・グルーヴ・ホルムズのオルガン演奏に魅了されて生徒となった。

そして、マクグリフは1960年代より数多くの作品を録音していくが、最初に活躍したのはジュギー・マレーが主宰するリズム・アンド・ブルース寄りのレーベルの<スー>で、続いて1966年にソニー・レスターが立ち上げた<ソリッド・ステート>の看板プレイヤーとなった。その後<ソリッド・ステート>は1969年に終了し、マクグリフも一時音楽業界から足を洗って牧場主へ転職した。

しかし、ソニー・レスターが1971年に新レーベルの<グルーヴ・マーチャント>を立ち上げ、そのラヴコールを受けて音楽界にカムバックし、再び数々のアルバムをレコーディングしていく。<ブルーノート>でのレコーディングは、この<ソリッド・ステート>時代と<グルーヴ・マーチャント>時代の間に行われている。

当時の<ブルーノート>は<リバティ>の傘下で、その関連レーベルでもマクグリフはレコーディングを行っているが、それらは全てレスターがプロデュースしている。<ソリッド・ステート>の親レーベルの<ユナイテッド・アーティスツ>も<リバティ>傘下で、そうした関係から<ブルーノート>の3作もレスターがプロデュースしたのだろう(同様に当時のチック・コリアやジェレミー・スタイグの<ブルーノート>録音もレスターがプロデュースしている)。

1970年前後のレスターのプロデュース作品はソウル・ジャズやジャズ・ファンク色が強く、マクグリフの『Electric Funk』(1970年)、『Something To Listen』(1970年)、『Black Pearl』(1971年)もその路線を代表するものだ。今回取り上げる「Back On The Track」は『Electric Funk』の中のナンバー。もともと1969年に<ソリッド・ステート>から7インチでリリースされ、カップリング曲の「Chris Cross」と共に『Electric Funk』に収録されている。

『Electric Funk』はレコーディング・データがきちんと残されておらず、後に1969年9月の録音ということがわかった。リリース当時は参加ミュージシャンも明らかではなく、後にブルー・ミッチェル、スタンリー・タレンタイン、ホレス・オット、チャック・レイニー、バーナード・パーディーらの参加が判明するなど(ギタリストは現在も不明)、いろいろ謎が多い。もともと<ソリッド・ステート>から出す予定がレーベル閉鎖のために中断し、翌70年8月に<ブルーノート>からリリースされたのではないかとも推察できる。

いずれにせよ、「Back On The Track」はアレンジャーも務めるオットの作曲で、センチメンタルな雰囲気を持つジャズ・ファンクとなっている。グルーヴィーでどっしりとしたリズム・セクションを軸に鍵盤やホーン類によって彩りを加え、出だしはメラントリックなトーンながら、サビの部分ではダイナミックな盛り上がりを見せる。マクグリフのアーシーな電気オルガン、オットのメロウなエレピという2段構えのキーボード・アンサンブルが特徴である。

Jimmy McGriff / Back On The Track


この曲のサンプリング例としてはO.C. (オマー・クレイドル)の「Ma Dukes」、ジャズ・リベレーターズの「Music In My Mind (Part 2)」、ウォーキン・ラージの「Reachin’ (For My People)」というヒップホップ3曲が挙げられる。どの曲も出だしにかけてのメロウなキーボード・フレーズを使っていて、その中でO.C.の「Ma Dukes」はテンポ・アップさせた上でムーディーな女性コーラスを組み合わせている。

O.C. / Ma Dukes


ジャズ・リベレーターズの「Music In My Mind (Part 2)」は生演奏も組み合わせたインストのジャジー・ヒップホップで、いろいろなフレーズやネタが次から次へと繰り出されるのだが、そうした中で「Back On The Track」の冒頭のメロウなエレピ・フレーズがスパイスとして挟み込まれる。

Jazz Liberatorz / Music In My Mind (Part 2)


一方、ウォーキン・ラージの「Reachin’ (For My People)」は冒頭部分をループさせて使い、中間ではスタンリー・タレンタインのテナー・サックスも差し込むという複数個所のサンプリングを行っている。3者3様のサンプリングを「Back On The Track」から紐解くことができるのである。

Walkin’ Large / Reachin’ (For My People)