COLUMN/INTERVIEW

【連載】スタンダード名曲ものがたり 第18回 星影のステラ


 

世の中に数多あるスタンダード・ナンバーから25曲を選りすぐって、その曲の魅力をジャズ評論家の藤本史昭が解説する連載企画(隔週更新)。曲が生まれた背景や、どのように広まっていったかなど、分かりやすくひも解きます。各曲の極めつけの名演もご紹介。これを読めば、お気に入りのスタンダードがきっと見つかるはずです。

文:藤本史昭


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【第18回】
星影のステラ
Stella By Starlight
作曲:ヴィクター・ヤング
作詞:ネッド・ワシントン
1944年


スタンダード・ナンバーの多くは、ミュージカルや映画の中から生まれましたが、しかし必ずしもその出典劇の内容やムードを曲が反映しているとは限りません。たとえば今回ご紹介する〈星影のステラ〉。なんとこれ、『呪いの家』(原題『The Uninvited』)というホラー映画の主題曲なのです。

1940年代前半、アメリカでは超常現象をテーマにした映画が大流行しました。吸血鬼、フランケンシュタイン、狼男…。『呪いの家』もその流れで1944年に制作されたものですが、痴情のもつれに端を発する因果話というストーリーには、前述のモンスター物とは一線を画した深みと新しさがあり(最後のどんでん返しは現代のサスペンス・ドラマでも通用しそうです)、その証拠にこの作品はその年最高の興行収入を記録、アカデミー撮影賞にもノミネートされました。

で、〈星影のステラ〉の話。主人公の音楽評論家/作曲家リックとその妹パメラは、とある海辺の一軒家を購入します(これがワケあり物件)。その売主の孫娘がステラ。彼女とリックはいつしか惹かれ合うようになり、ある日家を訪ねてきたステラのためにリックは作曲中の曲を弾いてきかせます。「それはなんという曲?」、「セレナーデ。星影のステラさ」、「それ、私のこと? うれしい!」…しかしこの直後に怪異現象が次々と起こりはじめます。

作曲者のヴィクター・ヤングは、その生涯に300を超える映画音楽を作ったこの分野の巨匠。オスカーを獲った『80日間世界一周』をはじめ、『シェーン』、『誰が為に鐘は鳴る』、『大砂塵』、『愚かなり我が心』などのテーマ曲は映画ファンでなくともどこかで耳にしたことがあるはず。またその中からは〈マイ・フーリッシュ・ハート〉、〈ゴールデン・イヤリングス〉、〈ラヴ・レター〉、〈ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ〉等々現代でも頻繁に演奏される曲たちも生まれました。

とりわけ〈星影のステラ〉は、コード進行が洒落ていて、またネッド・ワシントンが後からつけた歌詞もよかったのか、比較的早いうちからスタンダード化。現在に至るまで、インストゥルメンタル、ヴォーカル共に多くのジャズマンがカヴァーする名曲となっています。


●この名演をチェック!

デューク・ピアソン
アルバム『ハウ・インセンシティヴ』(Blue Note)収録


ピアソンはピアニストであるとともに優れたアレンジャーでもありましたが、とりわけこれはその際立った個性が示された作品。ビッグバンド・パートをコーラス隊が受け持つという一見異色の編曲ですが、その不思議な美しさはきく者の耳を奪わずにはおきません。
 




キース・ジャレット・トリオ
アルバム『星影のステラ』(ECM)収録


伝説のスタンダーズ・トリオによる初のライヴ・アルバムからのパフォーマンス。虚飾を排した抑制的表現の中にヒリヒリとした緊張感が漲る、ピアノ・トリオ版〈ステラ〉の最高峰といっても過言ではない名演です。