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【連載】スタンダード名曲ものがたり 第20回 スワンダフル


世の中に数多あるスタンダード・ナンバーから25曲を選りすぐって、その曲の魅力をジャズ評論家の藤本史昭が解説する連載企画(隔週更新)。曲が生まれた背景や、どのように広まっていったかなど、分かりやすくひも解きます。各曲の極めつけの名演もご紹介。これを読めば、お気に入りのスタンダードがきっと見つかるはずです。

文:藤本史昭


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【第20回】
スワンダフル
'S Wonderful
作曲:ジョージ・ガーシュウィン
作詞:アイラ・ガーシュウィン
1927年


1927年夏、ジョージとアイラのガーシュウィン兄弟は、新しく建てられたアルヴィン劇場のこけら落としのためにミュージカルの制作を依頼されます。その新作はアデール&フレッド・アステア姉弟の主演で、同年10月に『スマーティ (うぬぼれ屋)』のタイトルで試験興行がはじまりますが、客の入りも悪ければ批評家からもこき下ろされるという惨憺たるありさま。

早急に改作の要ありと、ジョージとアイラの音楽も半分以上が廃棄され――その中には有名な〈ハウ・ロング・ハズ・ディス・ビーン・ゴーイング・オン?〉も入っていました――追加の曲作りを興行主から命ぜられます。

兄弟はこの仕打ちを黙って受け入れ、わずか6週間で音楽のほとんどを書き直しました。しかし災い転じてなんとやら。『ファニー・フェイス』と改題され生まれ変わったこのミュージカルには、数多あるガーシュウィン作品の中でも傑作の誉れ高い名曲が含まれていました。〈スワンダフル〉です。

アメリカン・ポピュラー・ソングの作詞作曲家には名コンビといわれるチームがいくつかありますが、中でもジョージとアイラの相性は別格でした。それは、天才的な音楽性と、斬新な作詞能力を持つ2人がたまたま兄弟だったという、いわば奇跡的偶然の産物でした。

その音楽は、まるで1人の人間が曲も詞も書いたような一体感と、2人の人間でなければ生まれ得ない相乗効果を併せ持っていますが、とりわけその感が強いのがこの歌。シンプルでキャッチーなメロディと、それを彩る豊かな和声進行は、もちろんそれだけでも名曲の条件を備えていますが、そこに“’s wonderful”“ ‘s marvelous”といった絶妙の歌詞が置かれることによって、この歌の魅力は何倍にもなるのです。

伝えられるところによれば、ジョージが社交的で派手好きだったのに対し、アイラは学者肌で控えめ。万事、弟のほうがもてはやされることが多かったにもかかわらず、兄はそれを不満に思うことなくジョージを支え続けたそうです。こんな名曲が生まれたのは、そんな純粋な兄弟愛があればこそ、だったのかもしれませんね。


●この名演をチェック!

ヘレン・メリル
アルバム『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』(EmArcy)収録


この曲の決定版といってもよい名唱、そして名演。速いテンポに悠々と乗るメリルと、あとに続くソリスト(とりわけジミー・ジョーンズの斬新なピアノ)、そしてクインシー・ジョーンズの見事なアレンジは、いまだに色褪せることはありません。




トニー・ベネット&ダイアナ・クラール
アルバム『ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ』(Verve)収録


現存する最高のヴォーカリストの1人であるベネットと、女王クラールによる奇跡のデュエット。まるで映画の1シーンを観るような2人の歌唱はまさに’S Wonderful! バックを担うビル・チャーラップのトリオも最高のサポートを聴かせます。