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【連載】Sampling BLUE NOTE 第19回 Duke Pearson’s Big Band / Ground Hog


“史上最強のジャズ・レーベル”と称されるブルーノート。その一方で、“最もサンプリングされてきたジャズ・レーベル”と言っても過言ではない。特に1970年代のBNLA期に発表されたソウルフルかつファンキーな作品は、1980年代以降ヒップホップやR&Bのアーティストによって数多くサンプリングされた。このコラムは、ジャズだけでなくクラブ・ミュージックにも造詣の深いライターの小川充が、特に有名な20曲を厳選し、その曲の魅力やサンプリングされて生まれた主要トラックを解説する連載企画(隔週更新)。

文:小川 充


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【第19回】
Duke Pearson’s Big Band / Ground Hog
デューク・ピアソン / グラウンド・ホグ
AL『イントロデューシング・デューク・ピアソン・ビッグ・バンド』収録


◆サンプリング例
De La Soul feat. スチャダラパー & 高木完 / Long Island Wildin’


前回紹介したボビー・ハッチャーソンとハロルド・ランドによる『San Francisco』だが、このアルバムでプロデューサーを務めたのはデューク・ピアソンである。そもそもピアニストのピアソンは、同時にアレンジャーとしても手腕を発揮しており、<ブルーノート>ではしばしばプロデューサーとして作品制作にも起用された。実際に『San Francisco』ではピアノは演奏しておらず、完全なる裏方仕事を行っている。

アイク・ケベックの後を継いで<ブルーノート>のA&Rとしてアーティストのスカウトを務めていたこともあり、ミュージシャンとしての腕もさることながら、人間関係やビジネスの調整役としても有能な人物だったようだ。そうした点がプロデュース・ワークにも生かされたのだろう。

ピアソンがアレンジした成功例としてはドナルド・バードの『A New Perspective』が知られるが、そもそもピアソンの才能を見出したひとりがバードである。バードとペッパー・アダムスのバンドに参加してピアソンは名を上げたのだが、面白いことにピアソンはキャリアの初期においてはバードと同じトランペッターとして活動していた。

もともと楽器を始めたのは金管楽器で、その後にピアノを学んでおり、軍隊のバンドでもトランペットを演奏していた。ピアニストであると同時にホーン・アンサンブルにも長けているとなれば、アレンジャーとしては鬼に金棒である。ビッグ・バンドにおいてもその手腕が発揮されるのは当然だろう。バードとのビッグ・バンドはじめ、九重奏団など大編成の楽団を率いて作品を残している。

<ブルーノート>におけるピアソンのビッグ・バンド作品には、1967年12月録音の『Introducing Duke Pearson’s Big Band』と1968年12月録音の『Now Hear This』がある。どちらもメンバーは同じで、チック・コリア、ペッパー・アダムス、ランディ・ブレッカー、フランク・フォスター、ルー・タバキンらが参加している。フォスターにしろ、タバキンにしろ、ビッグ・バンドのリーダーとしても定評のある面々が集っており、まさに最強軍団の名前がふさわしいグループだったのだ。

ビッグ・バンドの初録音となる『Introducing Duke Pearson’s Big Band』は、ピアソンのほかにチック・コリアやジョー・サンプルが作曲した作品も取り上げ、当時はまだ若手だった彼らの才能を広める役も買っている。そうした目利きぶりや度量の大きさがリーダーとしてのピアソンの才覚を物語る。

『Introducing Duke Pearson’s Big Band』の中で「Ground Hog」は8ビートのジャズ・ロック調ナンバー。メジャー・コードのダイナミックなホーン・アンサンブルを持ち、同じ1960年代で言えばクインシー・ジョーンズのビッグ・バンドによる「Soul Bossa Nova」のような華やかさがある。

ちなみに「Ground Hog」とは北米大陸に住む地リスのことで、ウッドチャックとも呼ばれる。ずんぐりと可愛げのある容姿で、人々から愛される動物である。「Ground Hog」がどこかコミカルでユーモラスな雰囲気を持つのは、そんなウッドチャックをイメージしているからだろう。

Duke Pearson’s Big Band / Ground Hog



この「Ground Hog」をサンプリングした作品として、デ・ラ・ソウルの「Long Island Wildin’」が挙げられる。1993年のアルバム『Buhloone Mind State』収録曲で、何と言ってもトピックはスチャダラパーと高木完の参加。日本向けのボーナス・トラックではなく、あくまで正式な招聘という形でスチャダラパーと高木完がヒップホップの本場アメリカに乗り込んで共演している。日本人ラッパーが海外アーティストの作品に参加した先鞭とも言える作品で、いまだに数少ない例のひとつである。

デ・ラ・ソウルもスチャダラパーもヒップホップやラップの世界ではコミカルさを個性とした稀有な存在であり、ユーモラスな雰囲気の「Ground Hog」のサンプリングは彼らの個性にピッタリだと言えよう。

De La Soul feat. スチャダラパー & 高木完 / Long Island Wildin’