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【特集】2021年、私の愛聴盤 ~ 後藤雅洋

毎年恒例、BLUE NOTE CLUB執筆陣による今年愛聴したジャズ・アルバム3枚のご紹介。
第二回目は、昨年も選盤頂き、今年はSACD~SHMの試聴会を開かせて頂いたジャズ喫茶いーぐるのオーナー、後藤雅洋さんです。

文:後藤雅洋

デルヴォン・ラマー『I Told You So』(P-Vine)


ヌバイア・ガルシア『SOURCE ⧺ WE MOVE』(Concord)


チェンチェン・ルー『サ・パス』(P-Vine)


 毎年年末になるとこの手のアンケート的原稿依頼をいただくのですが、今年のお題は「ベスト盤」ではなく「ジャズの愛聴盤」ということなので、実に容易にセレクトが進みました。というのも「2021年ベスト盤」というとことですと、当然「今年のジャズ・シーン総括」みたいなある意味で「評論家的」視点も要求されますが、「愛聴盤」ならシンプルに聴いた回数が多いものなので、挙げるのが簡単。

 それにしてもデルヴォン・ラマーはよく聴きました。ジャズ喫茶「いーぐる」では、毎朝開店の11:30から1時間を「新譜アワー」として毎月購入した新譜をお客様にご紹介しているのですが、このアルバムは購入月を過ぎても頻繁にかけまくったものです。
 どこがいいのか。要するに私の音楽的嗜好の原点に見事に突き刺さったのですね。実を言うと私は20歳でジャズ喫茶を開業する以前はソウル・ミュージック・ファンで、60年代まだディスコが一般的でない時代から霞町界隈(今の西麻布)のその手の音楽がかかる怪しげな店に通ったものでした。

 



ラマーのオルガン・トリオ、デヴィッド・マグロウの切れ味抜群のドラミングに乗ってファンキーなラマーのオルガンが響き、それを煽りまくるシンプルなジミー・ジェイムスのギターがアーシーな気分を盛り上げる。全体にダークでザラっとした手触りのサウンドが実に心地よく、若き日のディスコ体験を彷彿させる快楽盤なのです。

確か昨年はブルーノート・クラブのベスト盤にヌバイア・ガルシアの『Source』(Concord)を挙げたと思うのですが、今年は年末になってそのリミックス盤『Source We Move』(Concord)が出ました。これがまた私のツボに嵌ったのですね。想像した通り冒頭収録曲は『Source』の目玉トラック、コーラス・グループ「ラ・ペルラ」が活躍する「La cumbia Me est llamando feat. La Perla」で、リミキサーはウエスト・ロンドン・シーンの大物カイディー・テイタム。他にもレゲエのトラックや懐かしのドラムンベースが小気味良いペルー出身のD.J.デング・デング・デングのリミキシングなど、大音量で聴いた気持ち良さは言葉にし難いものがあります。

 



このアルバムもまた私の(ジャズ以外の)音楽嗜好に沿うもので、一時期かなり頻繁にレゲエ・バーに通ったものでした(当時のお気に入りはタクシー・チーム)。そしてまたドラムンベースもけっこう好きで、少々ゲテっぽい代物ですが、デレク・ベイリーがD.J.Ninjと共演したアルバムなんかを(深夜営業時間外に)店で大音量で聴いたものです。

最後に挙げた台湾出身の女性ヴァイブラフォン奏者Chien Chien Luのアルバム『Path』(P-Vine)は、ロイ・エアーズの《We Love Brooklyn Baby》をカヴァーしたり、スタンダードの名曲《Invitation》を採りあげたりしているのですが、やはり西欧ミュージシャンとは一味違うエスニック・テイストが感じられるのですね。要するにポップな感覚と現代性が巧い具合にミックスしている。これが気軽に聴ける心地よさに繋がっているのでしょう。これもまた私のお気に入り。