COLUMN/INTERVIEW

名オルガン奏者、ロニー・フォスターによる半世紀ぶりのブルーノート復帰作『Reboot』

Ronnie Foster 『Reboot』


文:原田和典

ア・トライブ・コールド・クエストやマッドリブがサンプリングした「ミスティック・ブリュー」を含む初リーダー・アルバム『ザ・トゥー・ヘッディド・フリープ』のリリースから、ちょうど半世紀。名オルガン・プレイヤー、ロニー・フォスターがブルーノート・レコーズ復帰を果たした。

タイトルは『リブート』(再起動)、古巣からの作品発表は『チェシャ・キャット』(1975年)以来の快挙だ。

モダン・ジャズ~ジャズ・ファンクのオルガン奏者としては第1世代のジミー・スミス(1928年生まれ)、第2世代のラリー・ヤング(1940年生まれ)に次ぐ第3世代に属するはずだが、そんな“若獅子”フォスターもこの5月に72歳を迎えた。



新作を再生する前に、「さすがに守りに入ったんじゃないか? すっかり円熟してしまったのではないか?」とちょっとでも思った自分が間違いだった。オルガンを制する喜びが溢れ出すような、この精力的なタッチはなんだ。ジャズ・ファンクはもちろん、4ビート・スウィング、ブルース・ロック、ラテン、フラメンコ、ゴスペル調などなど多彩な楽想によるナンバーをこれでもかと揃えて、オルガンでできることはとことんまでやりつくしてしまおう的な思い切りの良さも感じさせてくれる。各曲の演奏時間はだいたい5分以内に抑えられているものの、ツボを得たメロディ・ラインの提示やアドリブ、冴えわたる左手のベース・ラインをはじめ、名人芸が生き生きしている。



『チェシャ・キャット』のあと、他のレコード会社に移ってからの彼のアルバムは、どちらかというエレクトリック・キーボード全般のプレイにスポットを当てていただけに、オルガン奏者としてのフォスターが再び堪能できる日が来るとは喜びにたえない(ハモンドB-3ではなく、XK-5を使用)。



フォスターは1950年、ニューヨーク州バッファローに生まれた。当初はクラシック・ピアノを学んでいたものの、12歳の時にジミー・スミスの演奏を聴いてジャズ・オルガンに開眼。スミスの自宅に赴いて指導を受けたこともあるそうだ。

ブルーノートとの関係ができるのは70年、エマヌエル・リギンス(カリーム・リギンスの父)の後任としてグラント・グリーンのバンドに迎えられてから。しかし当時のブルーノート社長、フランシス・ウルフは71年に急逝。『ザ・トゥー・ヘッディド・フリープ』以下、旧ブルーノートにおけるフォスターのリーダー・アルバムは、新社長ジョージ・バトラーの許でつくられた。



75年には旧友ジョージ・ベンソン(フォスターが14歳の時に、ジミー・スミスの紹介で知り合ったという)のバンドに迎えられ、76年のメガ・ヒット作品『ブリージン』に貢献。やはり大きなセールスをあげたスティーヴィー・ワンダーの大作『キー・オブ・ライフ』に参加したのも同時期のことだ。80年代に入るとブラジルの才人シンガー・ソングライター、ジャヴァンをプロデュース、85年にはスタンリー・タレンタインのブルーノート盤『ワンダーランド』(スティーヴィー・ワンダー作品集)の監修も務めた。

その後もR&Bシンガーのウィル・ダウニングとの共演、6年間続いたショウ「スモーキー・ロビンソン・プレゼンツ・ヒューマン・ネイチャー」等で健在ぶりを示したが、2010年代後半になると原点回帰とばかりにジェイク・ラングリー(ギター)、ジェス・ゴーペン(ドラムス)を迎えてオルガン・トリオを結成。



『リブート』は基本的にマイケル・オニール(ギター)、ジミー・ブランリーないし息子のクリス・フォスター(ドラムス)との新トリオを軸にしたセッションで構成されており、「ヘイ・グッド・ルッキン・ウーマン」ではワイルドな歌声も披露。友人スティーヴィーの楽曲「イズント・シー・ラヴリー」における、ひねりを加えたリズム・パターンにも引き込まれる。「Jズ・ドリーム」と「アフター・カンヴァセーション・ウィズ・ナディア」はそれぞれフォスターのオルガン、ピアノによる無伴奏ソロだ。



また、『リブート』は、昨年9月に惜しまれつつ他界したドクター・ロニー・スミスに捧げられている。共にオルガンを演奏し、歌も歌い、新旧のブルーノート・レコーズに録音を残し、ジョージ・ベンソンのバンドに在籍経験を持ち、同じ街に生まれ---------と、共通点の多い、9歳年上のスミスの存在はフォスターにとって大きな目標の一つであったに違いない。フォスターは“このアルバムを私の兄、友人、同郷の仲間であるヒーロー、ドクター・ロニー・スミスに捧げる。彼はハモンドB-3オルガンの世界で、ベストを極めたひとりだった”とコメントを寄せている。

ロニー・フォスターは1960~70年代ジャズ・オルガン・シーンを識る稀少なサヴァイヴァーのひとりである。彼が掲げるジャズ・オルガンの松明(たいまつ)が今後、さらに輝かしい光を放ちながら、次世代リスナー、次世代オルガン・プレイヤーを明るく照らすことを心から願う。


(作品紹介)
Ronnie Foster 『Reboot』

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