COLUMN/INTERVIEW

【連載】ジャズ百貨店 名盤BEST 20 第2回:キャノンボール・アダレイ&マイルス・デイヴィス『サムシン・エルス』

2016年の発売スタート以来、シリーズ累計出荷が75万枚を超えるユニバーサル・ジャズの定番シリーズ「ジャズ百貨店」。10月・11月に新たなラインナップ100タイトルが登場するのに先駆けて、これまでに発売された全510タイトルの中から“いま”最も売れている20枚をピックアップし、個性豊かな執筆陣が紹介します。



文:細田成嗣

黒地にクールなレタリングを施したジャケも二管クインテット編成の洗練されたサウンドも、1950年代モダン・ジャズ黄金期のパブリックイメージをそのまま体現したかのようなアルバムである。名盤中の名盤として聴き継がれてきた。有名な話だが、キャノンボール・アダレイ名義になっているものの、実質的にはマイルス・デイヴィスがリーダーだったという。「ワン・フォー・ダディー・オー」の最後では“これでいいだろ、アルフレッド?” とマイルスのしゃがれ声がプロデューサーに問いかけている。とはいえ、アルトサックスの流麗なアドリブがメインディッシュの「ラヴ・フォー・セール」や、収録楽曲中唯一カルテット編成で渋くブルージーなサックス・ソロが続く「ダンシング・イン・ザ・ダーク」を耳にすると、錚々たるメンバーのなかで最年少だったキャノンボールがやはり主役のアルバムだなとは感じる。



 今やBGMとして重宝されている作品でもあるだろう。ただ、あらためてじっくりと聴き返してみたら、冒頭曲「枯葉」に興味深いところがあった。むろん誰もが知るスタンダード曲の最も有名な録音の一つで、なにを今さらと言われるかもしれないが、気になったのは約2分とやけに長く続くアウトロだ。アーマッド・ジャマルのアレンジから影響を受けたというベースラインをサム・ジョーンズがミニマルに反復しつつ、アート・ブレイキーはスクエアとシャッフルを行き交うヨレたビートを奏で、そこにハンク・ジョーンズ、そしてマイルスがモーダルなソロを添える。モード・ジャズの実験のようでもありながら、リズムが前景化するサウンドは21世紀のジャズと並べて聴きたくもなる。あるいはローファイ・ヒップホップ的とでも言えようか。いずれにしてもここにはモダン・ジャズのパブリックイメージから逸脱するなにかがあるような気がする——そうした既存のイメージに回収し得ない要素を潜ませているところもまた、名盤たるゆえんなのかもしれないが。


【リリース情報】
キャノンボール・アダレイ&マイルス・デイヴィス『サムシン・エルス』

UCCU-5655
https://store.universal-music.co.jp/product/uccu5655/

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