COLUMN/INTERVIEW

【連載】ジャズ百貨店 名盤BEST 20 第13回:ビル・エヴァンス『ポートレイト・イン・ジャズ』

2016年の発売スタート以来、シリーズ累計出荷が75万枚を超えるユニバーサル・ジャズの定番シリーズ「ジャズ百貨店」。10月・11月に新たなラインナップ100タイトルが登場するのに先駆けて、これまでに発売された全510タイトルの中から“いま”最も売れている20枚をピックアップし、個性豊かな執筆陣が紹介します。



文:井上銘

スコット・ラファロ(b)とポール・モチアン(ds)のトリオの大名盤ですね。初めてこのアルバムを聴いたのは10代の時だったと思うのですが、いまの自分が聴くとまた違って聴こえて響いてくるのは音楽の素晴らしさですよね。一聴してこの時期(1959年)、トリオがすごく高いモチベーションで音楽に向き合っていたのがよく伝わってきます。また、自分たちの音楽のやり方に確信を持って、それぞれが音を奏でている様子が目に浮かびます。その後の『エクスプロレイションズ』(61年)や、『サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』(61年)、『ワルツ・フォー・デビイ』(61年)で繰り広げられる三位一体、丁々発止のやり取りの出発点といえるアルバムなのではないでしょうか。僕はこの"生命の誕生"のようなエネルギーを感じられる作品が大好きです。



「ペリズ・スコープ」は、当時のガールフレンドのために作った曲だそうですが、その後の彼のキャリアでも長く演奏された代表曲のひとつですよね。とっても素敵なメロディの愛おしい曲です。ここでのスコット・ラファロのベースラインは曲の美しさをより印象的なものにしながら、緊張感も与えて、大事に音楽を進めています。本当に素晴らしいベーシストですね。



個人的ベスト・トラックは、「恋とは何でしょう?(What Is This Thing Called Love?)」。美しさとインテリジェンスを身に纏っていますが、その実、スリルを求める男たちのドキュメントがこのトラックにしっかりとおさめられています。このバランスこそがビル・エヴァンスの音楽の持ついちばんの魅力なのではと僕は思っています。冒頭からポール・モチアンのブラシ捌きが音楽に絶妙なスペースを与えています。その中でのビル・エヴァンス、スコット・ラファロの楽器の歌い方に注目して聴いてみると、このトリオの音楽観がわかりやすく体感できるかもしれません。これまでも、これからも、ずっと語り継がれていく文字通りの名盤ですね。


【リリース情報】
ビル・エヴァンス『ポートレイト・イン・ジャズ』

UCCO-5552
https://store.universal-music.co.jp/product/ucco5552/

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