2016年の発売スタート以来、シリーズ累計出荷が75万枚を超えるユニバーサル・ジャズの定番シリーズ「ジャズ百貨店」。10月・11月に新たなラインナップ100タイトルが登場するのに先駆けて、これまでに発売された全510タイトルの中から“いま”最も売れている20枚をピックアップし、個性豊かな執筆陣が紹介します


文:井上 銘

1曲目「チトリンス・コン・カーネ」のドラム、ベース、パーカッションのイントロからして、もう最高に気持ちいい。レンジの高いところでお洒落にノセてくれるというか、この当時最先端のモダン・グルーヴ・ミュージックだなぁと改めて思いました。ギター・トリオにパーカッション、サックスというハーモニー的にシンプルな編成のチョイスも素敵なセンスだし、この編成でのアルバムは、当時他にはほとんどなかったのではと思います。何事も最初に発見する人は偉大ですね。



1963年というと、ジャズ・シーンはものすごい速さで音楽の開拓が進むなか、ケニーさんはスペースとリズムに自分の音楽を見出しているところがとてもかっこいいです。その後の70年代の音楽シーンを考えると、じつはかなり時代を先取りしていたのでは……。

と、書いているうちに少しずつアルバムの雰囲気は深い夜の世界へ。ソロ・ギター曲「ソウル・ラメント」なんて、リッチでワイルドだけど知性を感じる極上のサウンドです。ジャズ・ギターっていいですねえ、と思わず口からこぼれ出るような魅力たっぷり。



そんなケニー・バレルさんと石原裕次郎さんってハードボイルドなセクシーさという意味で似ているところがあるなぁって思うのは僕だけでしょうか!? この時、ケニーさん32歳。自分もいま31歳なので、その年でこんな沈んだ音、出せないでしょーー! なんて思っちゃいますけど、年齢なんて本当、ぜんぜん関係ないんですよね。良いものはいい。

このサウンドは紛れもないケニーさんのカラー。その音色で世界中さまざまな人の心を照らしてこられました。


【リリース情報】
ケニー・バレル『ミッドナイト・ブルー』

UCCU-5663
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