2016年の発売スタート以来、シリーズ累計出荷が80万枚を超えるユニバーサル・ジャズの定番シリーズ「ジャズ百貨店」。今年4月には新たにBOSSA NOVA編30タイトル、6月にFUSION編30タイトルが加わりました。その中から注目の作品をそれぞれ5作品ずつピックアップし、ご紹介しております。

 


 

クルセイダーズ『スクラッチ』

 

 本連載第3回目でも紹介したジョー・サンプルの鍵盤プレイが要となる「ザ・クルセイダーズ」による1974年のライブ・アルバム『スクラッチ』。


 フュージョンやクロスオーバーといったジャンル名すら存在しなかった’70年代より、ジャズの既成概念にとらわれず、ブルース、ファンクやロックのフィールを取り入れ、エレクトリック・ピアノやエレキ・ベースを用いることで、むしろソウル・ジャズ・ファンクと呼ぶにふさわしい音楽として魅力を放ってきた「ザ・クルセイダーズ」。


 ’79年の『ストリート・ライフ』、’80年の『ラプソディ・アンド・ブルース』で人気バンドとしての地位を獲得するが、そこに至るライブバンドとしての実力を発揮したのが本アルバム。


 メンバーはゲスト・ミュージシャンであるマックス・ベネット(b)、ラリー・カールトン(g)、そしてレギュラーはウェイン・ヘンダーソン(tb)、ウィルトン・フェルダー(ts)、スティックス・フーパー(ds)、ジョー・サンプル(Fender Rhodes)の4人。

 


 1曲目《Scratch》はウェインのオリジナル。ローズのバウンスしたリズムのバッキング・リフで始まりリズム隊が絡んでグルーブが熱気を帯びてくる。このシーン、前年リリースされたハービー・ハンコックの《Chameleon》と共通のファンクネスを感じる。そして随分じらして2:00のところでやっとホーンが入ってくる。ブルース的な構造の曲だが、コードが四度ではなく短三度に上がるところがユニーク。


  2曲目はザ・ビートルズのカヴァー。ドラマチックなイントロに続き、ギターやローズにより幻惑したムードが醸し出され、ホーンによってあの名メロディが奏でられる。ほんのり不協させたコードやリズム・フィギュアにより、オリジナル曲であるかのように聞かせることに成功している。

 


 3曲目《Hard Times》は、これぞブルース・ピアノ!というイントロに続き、ゴスペル・スタイルで高揚させるが、オルガンや生ピアノではなくローズであることによりアーバンなムードをキープしている。それにしてもウィルトンのサックスの艶っぽいこと!


 4曲目はキャロル・キングのカヴァー。ギターの隠し味も効果的なボサ・ノヴァ調R&Bなアレンジで心地よく進む。中盤サイキュレーション(循環呼吸)による2ホーンのロングトーンにより聴衆をノックアウトさせ、ラリーの泣かせるギターに突入しクライマックス!

 


 5曲目《Way Back Home》はウィルトンによるオリジナル。メンバー紹介の後、アーバンな落ち着いた演奏でアルバムを閉める。
アルバム全体を通してスティックスの間のある跳ね気味のドラムが心地よさに一役も二役も買っている。


 個人的にこのアルバムは高校3年の秋口にアナログLPでよく聞いた。受験勉強まっただ中の焦燥感や実家の匂いを鮮明に思い出す。とまあそんな個人的なノスタルジーはともかく、中期クルセイダーズのブルージーで熱いパフォーマンスが手に取るように味わえる。


 

【リリース情報】

クルセイダーズ『スクラッチ』

UCCU-6308

https://store.universal-music.co.jp/product/uccu6308/

 

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