キュートな歌声と確かなピアノ・テクニックによる弾き語りで1950年代から活躍を続け、「ウィスパー・ヴォイスの妖精」と呼ばれたジャズ・ヴォーカリスト/ピアニストのブロッサム・ディアリー。1924年にニューヨークの郊外イースト・ダーラムに生まれた彼女。ブロッサムという名前はなんと本名だそうです。10代でジャズ・ピアノを弾き始め、1940年代からクラブやバーでの演奏活動をスタート。1950年代には一時パリへ移住し、コーラス・グループ「ザ・ブルー・スターズ」のメンバーとして活躍するかたわらでピアニストとしても活動を続けていたところ、ヴァーヴ・レコードの主宰者であるノーマン・グランツから録音のオファーを受けアメリカへ帰国、1957年にアルバム『ブロッサム・ディアリー』をリリースします。その後もヴァーヴやフォンタナ、そして自身のレーベルに数々の作品を残し、我々を楽しませてくれました。晩年もニューヨークを中心として積極的に活動を続けていた彼女は、2009年にこの世を去っています。

 

独特の可愛らしい歌声にフォーカスがあたりがちなブロッサムですが、彼女が奏でるピアノも非常に評価が高く、若きビル・エヴァンスなど多くのアーティストに影響を与えたほどです。そんな彼女の生誕100周年を記念し、彼女の歌声やピアノを堪能出来る名録音の数々をセレクトした最新コンピレーションがリリースされました。ノラ・ジョーンズやファイスト、カイリー・ミノーグなど、今なお多くのミュージシャンやファンに愛され続けている彼女の音楽とキャリアを、このベスト盤で振り返ります。

 

 

1.  ロング・ダディ・グリーン

 

1970年に英フォンタナからリリースしたアルバム『ザッツ・ジャスト・ザ・ウェイ・アイ・ウォント・トゥ・ビー』からの1曲で、ブロッサムのキャリアの中でも人気の高いトラックです。印象的なピアノのイントロから、軽快なリズムに乗ったブロッサムの切ないメロディが何とも言えない感情を私たちに残してくれます。

 

 

2.  トゥ・ドゥスマン (ヴェリー・ソフトリー)

 

1957年にヴァーヴからリリースしたアルバム『ブロッサム・ディアリー』。大きなマイクを前に眼鏡をかけたブロッサムが座っている印象的なジャケットは、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。この曲はそのアルバムからのトラックで、全編をフランス語で歌っているのはレコーディング直前までフランスに住んでいた彼女ならではかもしれません。

 

 

3.  二人でお茶を

 

1959年にリリースした、ヴァーヴから3枚目となるアルバム『ワンス・アポン・ア・サマータイム』の1曲目に収録されているトラックです。愛する人との生活を夢見るという内容の曲がブロッサムのキュートなヴォーカルと美しいピアノで紡がれた、ロマンティックなバラードとなっています。

 

 

4.  ギヴ・ヒム・ジ・ウー・ラ・ラ

 

1958年にリリースされた、ヴァーヴから2枚目となるアルバム『ギヴ・ヒム・ジ・ウー・ラ・ラ』のタイトル・トラック。1939年のミュージカル「DuBarry Was A Lady」用にコール・ポーターが書いた1曲で、ここではチャーミングなブロッサムのヴォーカルを堪能することが出来ます。

 

 

5.  ジンジ

 

1967年に英フォンタナからリリースされたアルバム『スーン・イッツ・ゴナ・レイン』からの1曲。ボサ・ノヴァの神様であるアントニオ・カルロス・ジョビンが作曲した多くの名曲のうちの1つで、ここでもボサ・ノヴァのリズムをベースに彼女のヴォーカルとオーケストラでドリーミーな世界を作り出しています。ブロッサムには他にもボサ・ノヴァの名曲をいくつか録音しているので、気になった方はぜひチェックしてみてください。

 

 

6.  アイ・ヒア・ミュージック

 

アルバム『ブロッサム・ディアリー』からのトラックで、元々は1940年の映画「Dancing on a Dime」用にバートン・レインとフランク・レッサーが書いた1曲。現在ではジャズ・スタンダードの定番にもなっているこの曲を、ピアノ・トリオとギターいうシンプルな編成で軽快にプレイしています。飄々としているかと思いきや意外と抑揚の効いた彼女のヴォーカルにもとても惹かれてしまいますね。

 

 

7.  イフ・アイ・ワー・ア・ベル

 

アルバム『ワンス・アポン・ア・サマータイム』からの1曲。愛する人に胸が高鳴り、「もし私がベルだったらリンリン鳴っちゃうわ」というなんとも平和なこの曲に、ブロッサムのキュートな歌声がぴったりハマっています。バックを務めるベースのレイ・ブラウンとドラムのエド・シグペンはオスカー・ピーターソン・トリオの一員としても有名で、軽快にスウィングしている演奏がとても楽しい仕上がりです。

 

 

8.  ドゥープ・ドゥー・ディ・ドゥープ

 

こちらもアルバム『ワンス・アポン・ア・サマータイム』からの1曲。「ア・ドゥードリン・ソング」というタイトルとしても有名で、最近では原田知世さんと細野晴臣さんのデュエットも話題になりました。ブロッサムといえばこの可愛らしいスキャットを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

 

 

9.  ディード・アイ・ドゥ

 

アルバム『ブロッサム・ディアリー』の冒頭を飾っているトラックで、元々は1926年にフレッド・ローズとウォルター・ハーシュが書いた1曲。その後ベニー・グッドマンの録音などでヒットし、今ではジャズ・スタンダードとなっています。

 

 

10.  スウィート・ラヴァー・ノー・モア

 

1967年に英フォンタナからリリースしたライヴ・アルバム『スウィート・ブロッサム・ディアリー』からの1曲。「私から離れてちょうだい、あんたなんてもう恋人じゃないわ」という三行半を軽快に、コミカルに描いています。スウィング感たっぷりのブロッサムのピアノにも要注目です。

 

 

11.  ロード・アイランド・イズ・フェイマス・フォー・ユー

1960年にヴァーヴからリリースしたアルバム『ブロードウェイ・ヒット・ソングス』からのトラック。元々は1948年のミュージカル「Inside U.S.A.」用にアーサー・シュワルツとハワード・ディーツが書いた1曲です。全編にわたってシロフォン(木琴の一種)が効果的に使われていて、これまでとはまた違った魅力を感じることができる録音となっています。

 

 

12.  ワンス・アポン・ア・サマータイム

 

アルバム『ワンス・アポン・ア・サマータイム』のタイトル・トラック。1954年にミシェル・ルグランが作曲した「La Valse des Lilas」がオリジナルで、ジョニー・マーサーが英語の歌詞を書き「ワンス・アポン・ア・サマータイム」というタイトルでも広く知られるようになりました。短調と長調を行き来するブロッサムのヴォーカルは空中を浮いているようで、どことなく儚さも感じさせます。

 

 

13.  ブン

 

1961年にリリースされたアルバム『マイ・ジェントルマン・フレンド』からの1曲。シャンソンの巨人であるシャルル・トレネが脚本・主演を務めた1938年の映画「魅惑の道」用に作られた曲で、「ブン」という擬音は日本語でいうとドキドキにあたるものだそうです。軽快な演奏に加え、ボビー・ジャスパーによるフルートもとても印象的です。

 

 

14.  アイム・ヒップ

 

1966年に英フォンタナからリリースされたライヴ・アルバム『ブロッサム・タイム・アット・ロニー・スコッツ』からの1曲。「プレイボーイ誌を読んでいる」、「ガールフレンドのことも”man”と呼ぶ」、「ボビー・ダーリンが俺の友達を知っている」など自分をイケてると思う理由をあげていく内容で、オーディエンスの笑いも収録されていてその場の雰囲気を楽しめる録音になっています。こういうコミカルなプレイもブロッサムの魅力のひとつですね。

 

 

15.  マンハッタン

 

1925年のレビュー「Garrick Gaieties」用にリチャード・ロジャースとロレンツ・ハートが書いた1曲で、リー・ワイリーやオスカー・ピーターソン、ダイナ・ワシントンなど多くのレジェンドたちの録音も有名です。ここではブロッサムが優しく囁くように歌っているバラードでお届けします。

 

 

16.  アイ・ライク・ロンドン・イン・ザ・レイン

 

アルバム『ザッツ・ジャスト・ザ・ウェイ・アイ・ウォント・トゥ・ビー』収録の1曲。冒頭のファンキーなドラムが印象的です。少し凝ったコード進行、リヴァーブの効いたブロッサムの歌声、ソフトなホーン・セクションが、タイトル通りどこか雨の街角を思わせる不思議なトラックです。後半のサックス・ソロも聴きどころのひとつ。

 

 

17.  ザ・シェイプ・オブ・シングス

 

アルバム『ブロッサム・タイム・アット・ロニー・スコッツ』収録の1曲。ここではブロッサムが自身のピアノのみでの弾き語りを披露しています。1956年にシェルドン・ハーニックがミュージカル「The Littlest Revue」のために書いた曲で、丸いもの、四角いもの、三角のものをあげながらほろ苦い恋の物語をコミカルに描いた内容が素晴らしいので、ぜひ歌詞もチェックしてみてください。ユーモアたっぷりながらもどこか切ないこの曲を、ブロッサムの可憐な歌声で捉えた名演です。

 

 

18.  アルフィー

 

アルバム『スーン・イッツ・ゴナ・レイン』収録のトラックで、1966年の同名映画用にバート・バカラックが書き上げた名曲。バカラック自身もお気に入りの1曲だったそうです。ここではゴージャスなオーケストラをバックに、ブロッサムがしっとりと歌いあげています。

 

 

19.  プリュ・ジュ・タンブラス

 

アルバム『ギヴ・ヒム・ジ・ウー・ラ・ラ』収録のトラック。パリ時代に参加していたザ・ブルー・スターズでも録音している、ブロッサムお気に入りの1曲です。渋いイントロをギターで披露しているのはハーブ・エリス。ミドル・テンポでソフトにスウィングしている演奏がなんとも心地よいですね。

 

 

20.  スウィート・ジョージー・フェイム

 

アルバム『ザッツ・ジャスト・ザ・ウェイ・アイ・ウォント・トゥ・ビー』収録のトラックで、ブロッサムの録音の中でも人気の高い1曲。1960年代からイギリスで活動をスタートし、「イエ・イエ」や「ゲッタウェイ」といった全英1位シングルを輩出したシンガー・ソングライターのジョージー・フェイムに捧げた曲で、彼の才能やチャーミングな笑顔をべた褒めした内容になっています。

 

 


 

【リリース情報】

ブロッサム・ディアリー 

AL『わたしとブロッサム~100th Anniversary of Blossom Dearie』

4月24日(水)発売 UCCU-1688 SHM-CD ¥2,200(税込)

https://store.universal-music.co.jp/product/uccu1688/

 

 

01.  ロング・ダディ・グリーン

02.  トゥ・ドゥスマン (ヴェリー・ソフトリー)

03.  二人でお茶を

04.  ギヴ・ヒム・ジ・ウー・ラ・ラ

05.  ジンジ

06.  アイ・ヒア・ミュージック

07.  イフ・アイ・ワー・ア・ベル

08.  ドゥープ・ドゥー・ディ・ドゥープ

09.  ディード・アイ・ドゥ

10.  スウィート・ラヴァー・ノー・モア

11.  ロード・アイランド・イズ・フェイマス・フォー・ユー

12.  ワンス・アポン・ア・サマータイム

13.  ブン

14.  アイム・ヒップ

15.  マンハッタン

16.  アイ・ライク・ロンドン・イン・ザ・レイン

17.  シェイプ・オブ・シングス

18.  アルフィー

19.  プリュ・ジュ・タンブラス

20.  スウィート・ジョージー・フェイム