2020年に創立60周年を迎えた名門インパルス・レーベル。1960年にABCパラマウント傘下のジャズ専門レーベルとして発足して以降、ジョン・コルトレーンを旗頭に、ジャズが大きな変革を遂げた60~70年代の激動のシーンの一翼を担った。そんなインパルスを代表する名盤を、音楽評論家の原田和典が毎回3枚ずつ、合計60枚解説。8か月にわたってインパルスの魅力をひも解いていく連載企画。
【第ニ回】
<4> アフリカ・ブラス / ジョン・コルトレーン
Africa/Brass / John Coltrane (A-6)
ジョン・コルトレーンは結果的にインパルス・レーベル初の専属アーティストとなった。当初の同社は他レーベルからミュージシャンを借りて作品づくりにあたるのが通例だったが、コルトレーン側は特別待遇を求め、クリード・テイラーの上司がそれにOKを出した。とはいえ当アルバムは、彼がまだアトランティック・レーベルの傘下だった頃に録音されている。生涯唯一のオーケストラ作品であり、編曲や指揮はマッコイ・タイナーやエリック・ドルフィーも分担して担当(テイラーの言によると、当初はオリヴァー・ネルソンが引き受ける予定だったとか。別の資料によるとギル・エヴァンスがアレンジャー候補にあがっていたという説もある)。ソリストはコルトレーンとタイナーに限定されており、その周りを金管や木管の陰影豊かな響きが飛び交う。レコーディングは2度にわたって開催(計5曲、8テイク)、その中からコルトレーンとテイラーが3テイクを選出した。
※創立60周年記念「インパルス・ザ・マスターワークス on UHQCD」にて再発売
2020.5.20 ON SALE UCCI-9322 \1,980(tax in)
<5> アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ
Art Blakey & The Jazz Messengers (A-7)
ブルーノート・レーベル有数の花形バンドを借り出して制作した一枚。企画立案はクリード・テイラーだが、彼は61年6月下旬ヴァーヴ・レーベルに移籍することが決定していたので、現場では他の誰かが陣頭指揮をとったのはとも推測できる。当時クインシー・ジョーンズ・オーケストラにいたトロンボーン奏者カーティス・フラーをゲストに迎えた6人編成による録音で、レパートリーはフラーの書き下ろし「ア・ラ・モード」以外、すべてスタンダード・ナンバー。ブルーノート盤よりも抑制の利いた内容、音質(同じルディ・ヴァン・ゲルダーがエンジニアであるのに)が楽しめる。リー・モーガンのミュート・トランペットがフィーチャーされる「インヴィテーション」、ウェイン・ショーターの独壇場「ジー・ベイビー」も味わい深い。このレコーディングから1か月ほどでフラーは正式メンバーとなり、ほぼ同時期にモーガンとボビー・ティモンズは各自のバンド結成のため独立する。
※創立60周年記念「インパルス・ザ・マスターワークス on UHQCD」にて再発売
2020.5.20 ON SALE UCCI-9323 \1,980(tax in)
<6> ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード / ジョン・コルトレーン
“Live” At The Village Vanguard / John Coltrane (A-10)
ボブ・シール(40年代からジャズ・プロデューサーとして活躍してはいたが、親会社のABCパラマウントではポップス担当だった)は61年10月下旬、インパルス・レーベルの新プロデューサーに志願のうえ就任する。最初の大仕事はジョン・コルトレーンのヴィレッジ・ヴァンガード公演を収録することだった(シール曰く、「私がコルトレーンのライヴを録ろうと決めたんだ」)。名エンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーが4日間にわたって捉えた20数テイクの中から最初にリリースされたのは、テナーとソプラノとの両サックスを吹き分けたエスニック風味漂う「スピリチュアル」、マッコイ・タイナーのピアノもフィーチャーしながらソプラノで徹底的にモーダルに迫る「朝日のようにさわやかに」、そしてテナーの限界に挑むがごとき15分超のアドリブ・プレイ「チェイシン・ザ・トレーン」を収めた本アルバム。コルトレーンにとって初めてのライヴ盤でもある。
※創立60周年記念「インパルス・ザ・マスターワークス on ハイレゾCD」にて再発売
2020.3.18 ON SALE UCCI-40004 \3,080(tax in)
(次回更新は4月6日の予定です)
■リリース情報
創立60周年記念
インパルス・ザ・マスターワークス
シリーズ特設サイト: https://www.universal-music.co.jp/jazz/impulse-masterworks/
商品の予約・購入: https://store.universal-music.co.jp/feature/impulse-masterworks/
【ハイレゾCD (MQA+UHQCD仕様)】
全20タイトル 各\3,080(tax in) 生産限定盤
2020.3.18 ON SALE
1. バラード / ジョン・コルトレーン (UCCI-40001)
2. ジョン・コルトレーン・アンド・ジョニー・ハートマン (UCCI-40002)
3. デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン (UCCI-40003)
4. ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード / ジョン・コルトレーン (UCCI-40004)
5. インプレッションズ / ジョン・コルトレーン (UCCI-40005)
6. ブルースの真実 / オリヴァー・ネルソン (UCCI-40006)
7. クインテッセンス / クインシー・ジョーンズ (UCCI-40007)
8. アウト・オブ・ジ・アフタヌーン / ロイ・ヘインズ (UCCI-40008
9. アウト・オブ・ザ・クール / ギル・エヴァンス (UCCI-40009)
10. カンザス・シティ・セヴン / カウント・ベイシー (UCCI-40010)
2020.4.22 ON SALE
11. 至上の愛 / ジョン・コルトレーン (UCCI-40011)
12. クレッセント / ジョン・コルトレーン (UCCI-40012)
13. ライヴ・アット・バードランド / ジョン・コルトレーン (UCCI-40013)
14. セルフレスネス / ジョン・コルトレーン (UCCI-40014)
15. ザ・ロスト・アルバム / ジョン・コルトレーン (UCCI-40015)
16. バラードとブルースの夜 / マッコイ・タイナー (UCCI-40016)
17. ファイヴ・ミンガス / チャールス・ミンガス (UCCI-40017)
18. アルフィー / ソニー・ロリンズ (UCCI-40018)
19. リベレーション・ミュージック・オーケストラ / チャーリー・ヘイデン (UCCI-40019)
20. 生と死の幻想 / キース・ジャレット (UCCI-40020)
【UHQCD仕様)】
全40タイトル 各\1,980(tax in) 生産限定盤
2020.5.20 ON SALE
1. ザ・グレート・カイ&J.J. / J.J.ジョンソン&カイ・ウィンディング (UCCI-9321)
2. アフリカ・ブラス / ジョン・コルトレーン (UCCI-9322)
3. アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ (UCCI-9323)
4. イッツ・タイム / マックス・ローチ (UCCI-9324)
5. ザ・ソング・イズ・パリス / ジャッキー・パリス (UCCI-9325
6. 2 3 4 / シェリー・マン (UCCI-9326)
7. コルトレーン / ジョン・コルトレーン (UCCI-9327)
8. ジ・アーティストリー・オブ・フレディ・ハバード / フレディ・ハバード (UCCI-9328)
9. デサフィナード / コールマン・ホーキンス (UCCI-9329)
10. リーチング・フォース / マッコイ・タイナー (UCCI-9330)
11. ナウ! / ソニー・スティット (UCCI-9331)
12. ポイント・オブ・デパーチャー / ゲイリー・マクファーランド (UCCI-9332)
13. イルミネイション! / エルヴィン・ジョーンズ&ジミー・ギャリソン (UCCI-9333)
14. アイ・ジャスト・ドロップド・バイ・トゥ・セイ・ハロー / ジョニー・ハートマン (UCCI-9334)
15. ミンガス・プレイズ・ピアノ / チャールス・ミンガス (UCCI-9335)
16. ザ・グレイト / ロレツ・アレキサンドリア (UCCI-9336)
17. シー・ユー・アット・ザ・フェアー / ベン・ウェブスター (UCCI-9337)
18. ジャズ・ン・サンバ / ミルト・ジャクソン (UCCI-9338)
19. フォア・フォー・トレーン / アーチー・シェップ (UCCI-9339)
20. ユー・ベター・ノウ・イット!!! / ライオネル・ハンプトン (UCCI-9340)
2020.6.24 ON SALE
20タイトル発売予定