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『至上の愛 ~ライヴ・イン・シアトル』
[John Coltrane: A Love Supreme Live in Seattle 1965]


ジャズの聖典を巡る、音楽史を揺るがす大発見!歴史的名盤『至上の愛』のライヴ音源、奇跡の発掘!


 「ジャズの巨人」ジョン・コルトレーンは、カリスマ・アーティストと呼ばれて久しい。
 64年12月に録音された『至上の愛(A Love Supreme)』は、「四部作の組曲」と言う構成、家族~友人への感謝を込めた「自筆ライナーノーツ」、第4楽章の音楽と共に詠唱出来る「神への賛歌を綴った詩」など、これまでに無い画期的なフォームのアルバムであった。
 65年早々に発売されるや瞬く間に大ヒット!! その音楽はジャズファンだけでなく、他ジャンルのアーティスト、例えばサンタナやドアーズ、U2のボノと言ったロックファンの心まで鷲掴みにし、さらに政治的~社会的にも大きな影響力を持ち続けた。今なおカリスマが放ったマスターピース(最高傑作)に心酔し、傾倒する人が後を絶たない。いつしか『至上の愛』は、“ジャズの聖典”とも呼ばれるように成っていった。

【『至上の愛』録音記録】
 59年に録音され60年1月に発売されたコルトレーンのもう一つのマスター・ピース“『ジャイアント・ステップス(Giant Steps)』(Atlantic盤)は、元々三部作の組曲構想であった”と言う衝撃の事実を、表題の『至上の愛 ~ライヴ・イン・シアトル』のライナーノーツに詳しく書かせて頂いた。
 59年から5年間温め続けた次作の四部作組曲構想は、64年9月頃には既に出来上がっており、64年9月18日フィラデルフィアの《ショウボート・ラウンジ》で、組曲の一部=第二楽章“決意(Resolution)”(32分56秒)が、熱狂的コルトレーンファンであるサックス奏者フランク・タイベリ(Frank Tiberi)により私的に録音された音源が残されている。筆者は、既に25年ほど前からこの音源の正式なCD化に取り組んでいるが、昨今のデジタル技術をもってしても発売するに足るだけの音質クオリティを得られず、お蔵入りとなってしまった。
 64年12月9日と10日の二日間、ニュージャージー州イングルウッド・クリフスのRVG(ルディ・ヴァン・ゲルダー)スタジオに籠って創り上げた『至上の愛』。
 翌年夏65年7月26日、南フランスの避暑地アンティーブ、ジュアン・レ・パンの国際ジャズフェスティバルで四部作の組曲全てが、オリジナルメンバーである黄金カルテット〈コルトレーン(ts)、マッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)〉により完奏された。47分42秒の演奏は、ORTF(フランス国営放送)が録音~録画し、音源も映像もファンの間ではつとに知られる名演として語り継がれてきた。それが『至上の愛』の唯一現存する公式ライヴ記録であった。
 今回発売される音源は、65年10月2日米西海岸シアトルのパイオニア・スクエアーに在ったジャズクラブ《ペントハウス》でのライヴ録音で、これまで全く知られていなかったもの。まさしく奇跡の発掘と言わざるを得ない。
 ちなみに66年4月24日ニューヨーク、ブルックリンの《セント・グレゴリーズ・レクトリー》の募金運動で『至上の愛』を演奏したと言う記録はあるが、録音テープの発見には至っていない。

 


©Raymond Ross Archives_CTSIMAGES


【Live in Seattle】
 “Cosmos” “Evolution” “Tapestry in Sound” “Out of This World”などを収録した『Live in Seattle』は、65年9月30日(木)《ペントハウス》での録音で2枚組LP Impulse! AS 9202-2 としてインパルスが71年1月に発売した。その後、“Body & Soul” “Afro Blue”など同日演奏の未発表曲を追加して2枚組CD 『Live in Seattle [+2]』GRP GRD 2-146が94年にリリースされていた。
 しかし、今回の発売は、その二日後の10月2日(土)、同じ《ペントハウス》で『至上の愛』組曲四楽章全てを完奏した超レアー未発表音源というから寝耳に水、青天の霹靂とはまさにこの事であろう。

【ゼヴ・フェルドマン(Zev Feldman)】
 ブルーノート・レコーズの敏腕プロデューサーとして知られるゼヴ・フェルドマン(Zev Feldman)は、ドン・ウォズCEOに認められて以降、数々の未発表名録音を発掘し続け、「21世紀のインディー・ジョーンズ」と呼ばれている。
 2021年10月22日発売の本盤 [John Coltrane: A Love Supreme Live in Seattle 1965]だけでなく、11月5日発売の [Art Blakey and The Jazz Messengers: First Flight to Tokyo 1961]や9月3日に発売された[Lee Morgan: The Complete Live at The Lighthouse]など、ファン垂涎のレアー音源が次々と陽の目を見ている。これらは全てゼヴの不断の努力によるものである。寝ている時でも腹の上にスマホを乗せて24時間世界中の時差と戦っている様は、まるで、サックスを抱えたまま寝ていたと言われるコルトレーンの再来とも言えるゼヴの臨戦態勢である。

【チェイシング・トレーン(Chasing Trane)】
 ドキュメンタリー映画『チェイシング・トレーン(Chasing Trane)』は、2016年アメリカで初公開され、世界中の話題となって来た。麻薬渦で苦しむコルトレーン、その後57年春に麻薬を克服し、名盤『Blue Train』(Blue Note盤)~『Giant Steps』(Atlantic盤)を経て、不断の努力によって到達し得た聖典『至上の愛』(Impulse盤)の境地。そして“地球の平和(Peace on Earth)”を祈りながら全身全霊を傾けて吹き続けた66年の来日公演。1年後に急逝するカリスマ、ジョン・コルトレーンの生涯を赤裸々に描き出した大作は、ようやく日本全国の映画館でも2021年12月3日から劇場公開される予定である。


文:藤岡靖洋(Yasuhiro Fujioka)2021年10月22日記

コルトレーン研究家
著書『コルトレーン:ジャズの殉教者』(岩波新書, 2011年)、共著『The John Coltrane Reference』(Routledge出版, NYC 2007年)、米NY《The Coltrane Home》保存役員。


【リリース】
ジョン・コルトレーン『至上の愛 ~ライヴ・イン・シアトル』

好評発売中
品番:UCCI-1052(SHM-CD)
価格:2,640円(税込み)

先行シングル「パート1:承認 / Acknowledgement」
https://JohnColtrane.lnk.to/ALS_LivePR

【収録曲】
1. パート1:承認 / Acknowledgement
2. インタールード / Interlude
3. パート2:決意 / Resolution
4. インタールード2 / Interlude2
5. パート3:追求 / Pursuance
6. インタールード3 / Interlude3
7. インタールード4 / Interlude4
8. パート4:賛美 / Psalm


<パーソネル>
ジョン・コルトレーン(ts, ss, per)
マッコイ・タイナー(p)  ジミー・ギャリソン(b)
エルヴィン・ジョーンズ(ds)
ファラオ・サンダース(ts, per)  カルロス・ワード(as)
ドナルド・ギャレット(b)

★1965年10月2日、ワシントン州シアトル、ペントハウスにてライヴ録音

【Link】
・UMオフィシャル・ページ: https://www.universal-music.co.jp/john-coltrane/products/ucci-1052/
・本国オフィシャルHP: https://www.johncoltrane.com/