2016年の発売スタート以来、シリーズ累計出荷が80万枚を超えるユニバーサル・ジャズの定番シリーズ「ジャズ百貨店」。今年4月には新たにBOSSA NOVA編30タイトル、6月にFUSION編30タイトルが加わりました。その中から注目の作品をそれぞれ5作品ずつピックアップし、ご紹介しております。

 


 

マイケル・ブレッカー『マイケル・ブレッカー』

 ‘80年代一番かっこよいサックス・プレイヤーといえばマイケル・ブレッカー。音色やニュアンスがソリッドなので当時のサウンドとフィットしたし、アウトフレーズや同じ音を違った指使いで鳴らす奏法など斬新だった。渡辺香津美『TOCHIKA』収録の《Cokumo Island》《Manhattan Flu Dance》でのマイケルのソロは、数あるアドリブソロの中でも特に痺れたなあ。

 

 

 一世を風靡したブレッカー・ブラザーズだけでなく、当時すでに400近いアルバムに参加するスタープレイヤーだったにもかかわらず、リーダーアルバムが1作もなかったマイケル。ドン・グルニックとの共同プロデュースにより、ジャック・ディジョネット、チャーリー・ヘイデン、ケニー・カークランド、パット・メセニーが参加した本作は初リーダー作ということでも大注目された。

 

 

 ‘80年代らしいFM音源混じりのシンセパッドで始まり、情感あふれるブロウを聞かせる1.《SEA GLASS》は、バラードというよりマイケル・ワールドのプレリュードと言うべきか。続く2.《SYZYGY》は、コルトレーン&エルビンを明るくしたようなSax & Drumsデュオで始まるが、ベースパターン[ファファッファラーレー]に乗せてテーマが奏でられ、後続に多大な影響を与えたであろうケニーのピアノソロ、EWIでハーモニー成分を鳴らすマイケルのお家芸ソロ(後述する)へと続く。次の展開でギターソロとなるが一瞬であのワールドに持って行くメセニーの個性は半端ない。

 

 

 アルバム中オリジナリティが最も高いのは、ウィンド・コントローラーEWIでオーバーハイム・エキスパンダーやヤマハTX7といったMIDI音源モジュールを鳴らしている6.《ORIGINAL RAYS》。緻密なプログラミングによりフレーズに和音が追従するシステムのようだが、ここまでコントロールされたウィンドシンセを他に聞いたことがない。またテンポが速くなってから登場するジャック・ディジョネットのドラム、ジャズ・ファンク・ロック混合フィーリングがカッコいい!

 

 

 当時、2.と4.はリリース前にライブで聞いたことのある曲だったので興奮したのを思い出す。マイケル、ケニーをはじめマイク・スターン、リンカーン・ゴーインズ、オマー・ハキムといったメンバーでAKAIのイベントに出演し六本木PIT INNでも演奏されていた曲だったのだ。

 

 硬質なのにフニャッとした、スタジオワークをきっちりこなすのに変態、という相反する魅力あふれるマイケルの貴重な初リーダー作。30数年も前にモダンジャズとエレクトロニクスの可能性をも切り開いていた。本作は80年代を懐かしむだけでは済まないだろう。

 


 

【リリース情報】

マイケル・ブレッカー『マイケル・ブレッカー』

UCCU-6299

https://store.universal-music.co.jp/product/uccu6299/

 

ジャズの名盤勢揃い!ジャズ百貨店シリーズ特設サイト

https://www.universal-music.co.jp/jazz/jazz-hyakkaten/