2016年の発売スタート以来、シリーズ累計出荷が80万枚を超えるユニバーサル・ジャズの定番シリーズ「ジャズ百貨店」。今年4月には新たにBOSSA NOVA編30タイトル、6月にFUSION編30タイトルが加わりました。その中から注目の作品をそれぞれ5作品ずつピックアップし、ご紹介しております。

 


 

クインシー・ジョーンズ『スタッフ・ライク・ザット』

 今年90歳となったクインシー・ジョーンズによる1978年リリースのスタジオ・アルバム。リズム隊をリチャード・ティー(p)、エリック・ゲイル(g)、スティーヴ・ガッド(ds)という“Stuff”のメンバー(+アンソニー・ジャクソン(b))が担っており、ルイス・ジョンソン(b)やジョン・ロビンソン(ds)らの西海岸勢ではなくニューヨーク勢で固めたところにこのアルバムへのこだわりが感じられる。タイトルも“Stuff”に敬意を表してのものだと思われる。

 

 

 タイトル曲M-1.のヴォーカリストにはニコラス・アシュフォード、ヴァレリー・シンプソンの他にチャカ・カーンも加わっている。コーラスとブラスの掛け合いがゴージャスだが、ボトムが“Stuff”なので、そのテイストは持続している。わずかに加わるシンセ(マイケル・ボディカー)が新時代の到来を感じさせる。

 

 M-2.はルーサー・ヴァンドロス(vo)とパティ・オースティン(vo)の掛け合いによるラブソング。間奏で聴かれるウィンド・シンセ「リリコン」は名手トム・スコットによるもの(M-6.でも聴くことができる)。

 

 M-3.はもろ“Stuff”テイストだと思ったらリチャード・ティーも作曲に関わっていた。マイルドなアンサンブルの中にスパイスを投入するのはマイケル・ブレッカーによるアンプでひずませたテナーサックス・ソロ。

 

 

 そして本アルバム中の個人的ハイライトはM-4.《Tell Me A Bedtime Story》のアレンジ。作曲者ハービー・ハンコック本人がローズで弾いた長いアドリブ・ソロを採譜し、ハリー・ルーコフスキーのバイオリン(セクションに聞こえるが)できっちりなぞってオーバーダブ演奏されているのだ。ユニゾンされるのを想定したハービーのプレイだったと想像はするが、独特のアウト・フレーズも弦でなぞらえることでその遊び心がゴージャスな響きとなって、この盤をスペシャルなものにしている。クインシーのアレンジによって名曲のステイタスが更に上がったようだ。

 

 M-5.はパティ・オースティンをフィーチャーしたバラードだが、歌だけを目立たせるのではなく、トータル・アレンジの妙(所々浮かび上がるホルンの美しさ)に胸を打たれる。

 

 

 ヒューバート・ロウズのフルートで始まり曲中でもフィーチャーされるM-6.の艶っぽさよ!リチャード・ティーのお家芸であるフェイザーのかかったローズがとろけ、イントロのコーラス・アレンジは10ccの《I’m Not In Love》を彷彿させる。

ゴスペルのムードが押し寄せるM-7。豪華なヴォーカル勢によりこれでもかとスイング・グルーブ!

 

 とにかくゴージャスなR&Bアーバン・ミュージック(当時はブラック・コンテンポラリー=ブラコンと呼んだ)の金字塔だが、“Stuff”テイストが隅々まで生きていることが、クインシーの他のアルバムと一線を画すのではないだろうか。

 


 

【リリース情報】

クインシー・ジョーンズ『スタッフ・ライク・ザット』

UCCU-6304

https://store.universal-music.co.jp/product/uccu6304/

 

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